先日、1年ぶりに中国大連に出掛けた。滞在したのは、市内から約30キロメートル離れた大連経済技術開発区。多くの日系企業が進出しているこの開発区では、海外企業誘致のため、さまざまな優遇措置を取ってきたそうだ。2014年に、開発区を含む金普新区が国家級新区として承認されたことで、優遇政策や開放政策がさらに進んでいるらしい。
今回、一風変わった新しいレストランに連れて行っていただいた。機械のパーツを組み合わせたようなロボットのオブジェが出迎える店の入り口に、金色の2枚の看板が誇らしげに掲げてあった。一方は「衆創空間」、もう一方には「示范基地」と書かれている。はて、何だろう?
急速に経済成長を遂げてきた中国だが、現在その成長率は鈍化傾向にあるという。そこで新たな原動力として政府が打ち出したのが「大衆創業、万衆創新」、つまり創業を奨励する政策である。そんな中、ネット環境や社交環境など、あらゆる側面で創業を支援するオープンな空間「衆創空間」が急増しているらしい。創業同様、創業を支援する側も、資金面での援助や税制優遇を受けられるのが理由のようだ。
もう一つの金看板の意味は、金普新区大学生の創新創業模範基地ということだそうだ。大学生の起業なんて、シリコンバレーみたいだ。道理で店内のインテリアはオシャレで斬新。バーカウンターの端に毛沢東の胸像が置いてなかったら、ここが中国とは思えない造りであった。
せっかくなので、現地の食事情を知るために、スタッフのおススメ料理をオーダー。一つは「焼きカエル」。運ばれてきたそれは、何と炎に包まれているではないか! よく見ると、油を敷いた鉄製の大皿の中央に、同じく鉄製の鉢が置いてあり、その中にカエルの脚の串刺しが、テント状に縦に束ねられていた。この盛り付けでなければ、炎に包まれる演出は成り立たない。実によく考えられている。ピリ辛の味付けも、淡泊なカエルの肉をおいしく食べさせる工夫だろう。
お次はBraised Beef。今度は、雲海の中から岩が顔をのぞかせているかのような盛り付け。煙がなくなると、穴の開いたお皿の下にドライアイスが仕込んであったのが分かる。炎の次はアイスと飛び道具的な演出が続いたが、こちらも牛肉自体の出来栄えが素晴らしく、とろける食感とワインで煮込まれた複雑な味わいに舌鼓。いずれも、目でも舌でも楽しませていただき、恐れ入りましたというカンジであった。
コレはやっぱりSNS狙いなのだと思う。中国では、インスタグラムではなく、WeChatが主流なので、インスタ映えとは言わないだろうが、いずれにせよフォトジェニックであること、つまり思わず写真を撮って自慢したくなるような料理であることは、大連でもトレンドなのだろう。
…というワケで、2018年も国内外のさまざまな所へ、食のトレンドを追いかけに行く決意の筆者である。
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。
焼カエル
Braised Beef