【脱炭素でスマートな旅館 18】宿泊施設の脱炭素化 国際観光施設協会 エコ小委員会


 宿泊施設の脱炭素化を考えてみます。日本は石炭火力からの脱却が求められていますが、湿度が高いので太陽光発電の効率が悪く、欧州のように偏西風が吹かないので、再エネ比率8割を目指すドイツのようには進まないといわれています。資源の少ない日本としては、水素、アンモニア、メタネーション、バイオ、果ては核融合発電に向けて技術で補おうとしています。

 エネルギーを利用する側としては省エネに進むのはもちろんですが、グリーンエネルギーに転換することも必要です。グリーンエネルギーは化石燃料に比べコスト高な上に余分な労力が掛かります。

 系統電源で送られる電気や、海外から調達する重油や天然ガスは使いやすいのが特徴です。

 温泉熱、小水力、風力、太陽光、バイオなど地域で得られるエネルギーを使うにはそれなりの手間も費用も掛かります。山林が多くバイオエネルギーがたくさんある地域でもそれを使いこなすまでが大変です。環境省のゼロカーボンパークで地域の脱炭素化に向け活動していますが、脱炭素だけでは余分な労力が掛かり、資金的にも負担となり、補助金があっても地域の合意を得るのは難しいです。

 しかし若手経営者の中には自分の価値観でサスティナブルな宿泊施設を運営しているところがあります。CO2排出量ゼロの電力を高くても使い、薪(まき)ストーブ、生ごみのコンポスト化、脱プラスチック、紙のパンフレットを止めるなど、サスティナブルな経営を実践し、地域の自然を巡るツアーをプラン化し、それが若い人に受け入れられ、高稼働と高価格を維持しています。

 SDGs先進国のスウェーデンのような取り組みで脱炭素と観光振興を見事に結びつけて、市場に受け入れられています。SDGsの取り組みが経営の負担でなく、価値に結びつき、若い社員もフレキシブルな働き方で生き生きしています。

 エネルギー利用の方法を見直すことは、宿泊施設一般にみられる無駄な利用、過剰な消費を見つけ、改善することで利益に還元されます。欧米のインバウンドの人たちはサスティナブルな宿泊施設を選ぶ傾向にあり、日本人もその方向に進んでいるのです。SDGsでサスティナブルな観光を進めるには脱炭素が外せないのです。

 2月に東京ビッグサイトで開催される国際ホテル・レストランショーのホスピタリティデザインセミナー「宿泊施設の脱炭素化」にぜひ足を運んでください(2月14日11時20分から東ホールで開催)。

 (エコ・小委員会委員長 温泉協会認定温泉名人 佐々山建築設計 佐々山茂)

 
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