2月13日から4日間、東京ビッグサイトで国際ホテル・レストラン・ショーが開催されました。初日の午前中から来場者が多く、久しぶりに活気のある展示会でした。エコ・小委員会は<宿泊施設の脱炭素>のテーマで国際観光施設協会のブースで展示し、ホスピタリティデザインセミナーで講演しました。概要は下記の通りです。
1960年から続いた高度成長が30年続き、1990年にバブルが崩壊しました。それから30年後にはコロナ禍で世の中が大きく変わり今に至ります。次の30年後は日本がカーボンニュートラルを掲げている2050年になります。世界での化石燃料の使用量は最初の30年で2倍になり、バブル後の30年でまた2倍に増えています。化石燃料をこの状態で使い続けることは地球環境を考える上で持続可能でなく、宿泊産業も脱炭素へかじを切る必要性があります。特に地域に根差す宿泊施設は持続可能性が強く求められ、次の世代につなげるためにもサスティナビリティが重要なテーマになり、30代40代の若い方を中心に多くの賛同を得られたと思いました。
気候変動問題は誰も避けて通ることができません。そして子供世代、孫世代が30年、60年と持続可能な仕組みをつくるには、開発、発展より地域を含めた価値を上げることが高付加価値化につながると思います。それには新築よりも圧倒的に多い既存宿泊施設を小さなエネルギーで運用する仕組みを作り、それで宿泊施設の脱炭素化につなげることが重要です。
小さなエネルギーで運用する仕組みを作る四つの施策として(1)水光熱使用量の記録と見える化(2)外気負荷をコントロールする(3)無理、無駄なエネルギーを減らす(4)化石燃料からグリーンエネルギーへ転換―を提案しています。
1キログラムのCO2を金額に変換すると50円になり、宿泊客1人当たりのCO2排出量を30キログラムから20キログラムへ10キログラム減らすことで500円の宿泊客1人当たりの利益になります。単に高性能な省エネ機器に取り換えるだけでなく、小さなエネルギーで適正な運用をすることで脱炭素に向かうのです。
宿泊施設がカーボンニュートラルに向かうことで、環境に意識の高い人たちに受け入れられます。宿泊のカーボンフットプリントを利用客1人当たり20キログラム―CO2/人・日以内にすることは、宿泊施設の価値を高めるとともに利益を生み、働きがいにつなげ、ヨーロッパからのインバウンド客を受け入れるための未来志向な取り組みです。
(国際観光施設協会理事、エコ・小委員長 温泉協会認定温泉名人 佐々山建築設計 佐々山茂)