脱炭素経営が促進される時代にあってエネルギー使用量の多い宿泊産業も進化する時に来ています。脱炭素というと難しく聞こえますが、水光熱費の高騰に対応してエネルギー利用を適切にコントロールし、エネルギー使用量を削減することから始めます。
それにはいつ、どこで、いくらの水、油、ガスを使っているか知ることです。電気や都市ガスは毎月届く請求書から、水道は2カ月に1回来る請求書から月ごとの使用量が分かり、プロパンガスや灯油、A重油は納品書で毎月のエネルギー使用量が分かりますが、施設を科学的に運用するにはもう少し詳しいデータが必要です。
毎日担当者が敷地境界にある水道メーターを読み、引き込み位置のガスメーターを読み、電気はデマンド監視していればネットからデータが取り出せます。それを間違いなくメモして、エクセルに転記し、積算表示であれば前回との差し引きで使用量に変換します。そして利用人員を算出して利用客1人当たりの使用量に換算して初めて有効なデータになります。以前ある施設で担当者の記録簿を見せてもらいましたが、3と5が判別できなく、数字の位の間違いもあり、記録してあるだけで何の役にも立っていませんでした。
エコ・小活動でいつも問題となるのが1年分の水光熱データシートの収集で簡単なことに思えるのですが、実際には結構大変なようです。水道、電気、ガスの料金が値上がりし、温室効果ガスの規制が掛かってくると、使用エネルギーを正確に把握しなければ対策の取りようがありません。
エコ・小委員会では手間を掛けないで正確なデータを収集する実証実験を予定しています。最近は水道局や電力会社もパルス出力式のメーターを設置していますのでそれを活用したいです。油は難しいのですができるところから始めたいと思います。パルス出力の各種メーターにLET通信端末(要するに携帯電話)を接続して1日1回クラウドにデータを自動送信します。利用者はインターネットを通してデータを取りに行きます。そうすれば担当者がいちいちメーターを見に行き記録する手間が省け毎日の正確なデータが得られ、そのデータを水光熱データシートにマウスでドラッグすれば有効なデータになります。パソコンで基本的なエクセルが使えればできることです。パルス発信式のメーターが付いていればLET通信端末は1台数万円で通信費も1台当り月額数百円ですからイニシャルコスト、ランニングコストもあまりかからず、エネルギーを節約することで得られる利益を考えると費用対効果は十分見込めます。カーボンフリーな経営を目指して宿泊施設を進化させましょう。
(国際観光施設協会理事 エコ・小委員長、JIA登録建築家、佐々山建築設計 佐々山茂)