大正大学(東京都豊島区、大塚伸夫学長)は1926(大正15)年、旧大学令によって全国で21番目に誕生した伝統ある大学だ。仏教系大学として有名だが、いまでは6学部11学科を持つ総合大学としての地位を築いている。
2016年4月に創設された「地域創生学部・地域創生学科」は国が進める地域創生を学問的視点でアプローチ、探究するユニークな学部・学科で、日本の未来を築く「地域人」の育成を目指す。
集中型学習を行い、長期間の学外実習を行うカリキュラムとのマッチングを高めるため、1年間を4学期に区分するクォーター制を導入(他学部は1年間を2学期に区分するセメスター制)している。入学定員は100人。学位は学士(経済学)となる。
一番の特色は「地域実習」。地域の生活や文化を実際に経験し、4年間かけて一つの地域の課題の把握や解決策の提案と実践を行う。目指すのは知識と実践、理論と行動の融合。
1~3年次の実習期間は計168日間に及ぶ。長期間の実習を行うのは、学生が地域に溶け込んで、地域の人々と一緒になってさまざまな問題の解決策を考えることを重視するためだ。
「地域実習実施自治体」は、北は宮城県南三陸町から南は鹿児島県奄美市まで、現在その数12に及ぶ。このほか、包括協定締結自治体や連携団体などがあり、ネットワークは拡大の一途をたどっている。
2020年に初の卒業生が出ることになるが、進路としては、(1)観光による地域づくりの事業者としてビジネスモデルを構築する(2)地域資源を活用した新事業の創出や起業への挑戦(3)地方公務員としてまちの活性化や戦略の実現を目指す―などが考えられる。
徳島県阿南市での地域実習
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地域創生学部と密接な関係にあるのが2014年4月に設立された「地域構想研究所(清成忠雄所長)」。地域創生学部の教育研究を全面的に支援することによって、地域を志向し、地域を支え、活力ある社会を創生していく人材を育成する。
研究所は五つのプロジェクトに取り組んでいるが、その一つが「観光による地域づくり」。
観光地域づくりの先進事例を研究するとともに、行政間、官民、業種等の壁を乗り越え、観光交流の促進を目指すプラットフォーム(日本版DMO)の構築、そして新たな視点で地域資源(自然、歴史、文化、習俗などを含む)を活用した、豊かで質の高い観光による地域づくりの推進のためにノウハウを学ぶセミナーと各地の要望に応える形での事業で構成されている。
2018年度は、DMOセミナーやDMO現地セミナー、全国観光圏推進協議会、観光地域づくりマネージャーレベルアップ研修などを行う。
JR東日本、JTBで要職を歴任し、日本版DMOの第一人者である清水慎一・研究所教授は「地域創生で大切なのは志高く実行力のあるリーダーと、その思いを継続し、自立させる仕組み」と説く。
また、研究所は地域創生のための総合情報誌「地域人」を毎月発行。「地域の活性化にがんばる高校」(第14号)、「温泉地を蘇らせる!」(第31号)など、地域創生のヒントとなる特集は読みごたえがある。
大正大学大学日本版DMO特別セミナー