多様な世界の文化を理解
神奈川大学の前身は1928年創立の横浜学院。誕生から92年目を迎えた。
横浜はペリー上陸以来日本の表玄関であり貿易や文化交流の一大拠点。この地で、向学心のある若者に学習機会を提供したいと創設されたのが横浜学院だった。「教育は人を造るにあり」という創立者米田吉盛の思いは、いまも熱く受け継がれている。
神大(じんだい)の呼称で親しまれる同大は、大学に8学部、大学院に8研究科を有する全国有数規模の総合大学で、卒業生は約23万人。学校法人として、中高一貫校も擁する。現在、約2万人の学生が在籍している。
創立100周年に向けて教育・研究の新たな飛躍を目指す同大では、そのステップの一つとして、2020年4月に「国際日本学部」を新設した。同学部には「国際文化交流学科」「日本文化学科」「歴史民俗学科」の3学科を設置。世界はもちろん日本の歴史と文化の深い理解に根ざした、世界の人々の多様で多彩な交流と人類の共生を図ることのできる魅力的なグローバル人材の養成を開始した。
また次のステップとして、2021年4月には横浜みなとみらい地区に新キャンパスを開設。「国際・日本」の融合した未来「創造・交流」をコンセプトとする「みなとみらいキャンパス」には、現在は横浜キャンパスに置いている国際日本学部と外国語学部、湘南ひらつかキャンパスにある経営学部が移転する。国内外のあらゆる「人」が集い交流する「知」の拠点を開く。
神奈川大学では、これらのステップを新たな契機として、これまで以上に、異なる世界の文化や歴史、多元的な価値を理解し、いかなる地にあっても「世界的な」視点に立ち、この地球に住む良識ある市民として生きる、地域でも国際協力の場でも積極的に活躍できる人材の育成をめざす。
2020年11月に完成予定のみなとみらいキャンパスは、その名の通り横浜の心臓部・みなとみらい21地区に建てられる高さ約100メートル、地上21階建ての校舎で、グローバル系3学部に在籍する約5千人の学生が学ぶことになる。
今春に新設され、来春に新キャンパスへ移転することになる国際日本学部は、国際文化交流学科、日本文化学科、歴史民俗学科の3学科で構成。同学部のキーワードは「文化交流―多文化共生―コミュニケーション」だ。開学の地、横浜のフィールドを存分に活用した学びを展開。みなとみらいエリアの博物館や美術館、劇場などの現場での実習やフィールドワークといった体験型学習を積極的に取り入れる。
国際文化交流学科は、2年次から「文化交流コース」「観光文化コース」「言語・メディアコース」「国際日本学コース」の4コースに分かれて専門的な学修を展開する。
文化交流コースでは、世界のさまざまな文化を的確に理解し、比較によって自文化を相対化しながら、国際的な文化交流ができる人を育成する。観光文化コースでは、観光が生みだす文化とそれに関わる人々との関係を理解し、その知識を観光関連産業や国際的な相互理解の場で生かせる人材を育成する。言語・メディアコースでは、ことばとコミュニケーションに関する知識と洞察力、そしてメディアに関する実践的な知識と分析力で新時代を切り開く人を育成する。国際日本学コースでは、国内外の専門家とともに、内と外から「日本」を見つめなおし、日本文化を複眼的に理解し、日本でも世界でも活躍できる人を育成する。
横浜キャンパス
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島川教授
観光文化コースの島川崇教授に話を聞いた。
――国際日本学部国際文化交流学科の学生数は。
「学部として約300人、学科として177人。新設学部なので現在は1年生しかいないが、2年次からは学科が4コースに分かれる。各コースの上限人数は60人に設定している」
――担当教員数は。
「観光文化コースの教員は7人。3年次からゼミも始まるが、一つのゼミの学生数は10人以下になる。少人数制で目の行き届いた手厚い教育を行う」
――島川先生は、JAL、韓国観光公社などでの実務経験があり、総合旅行業務取扱管理者、サービス介助士の資格もお持ちだ。日本国際観光学会の会長も務めている。
「他大の観光学部・学科では観光以外が専門の教員も教えている場合が多いが、本学では7人の教員全員が観光の専門家で構成されているところが誇るべき特徴だ」
――観光文化コースの教育内容の特徴は。
「履修科目『人文観光資源論』に象徴されるように、人文学に基盤を置いているところだ。学問の領域は自然科学、社会科学、人文学に大別される。既存の大学における観光教育は社会科学系が中心だった。またコロナ禍でブレーキがかかるまでは、急速な観光立国化で目標数値が独り歩きし、本来の観光交流や持続可能な観光が軽視されてきた側面がないとは言えない。この機会に冷静になる必要がある。人文学的見地に立った観光教育で深みのある観光人材を育成していく」
――神奈川県内から通う学生が多いのか。
「県内、近隣都県から通う学生はもちろん多いが、大学全体としては、40%の学生が自宅外通学者だ。神奈川大学では1933年から独自の奨学金制度を実施している。『給費生試験』の合格者には4年間で最大840万円の返還不要な奨学金を給付する。2020年度は1万713人が同試験に挑戦した。この制度は単に経済援助を目的とするものではなく、広く全国から優秀な人材を募ることを目的としている」
神奈川大学