【観光人材を育てる 大人の武者修行4】住民を巻き込んだ体験型観光を学ぶ 南信州観光公社


 南信州の13市町村と19の地元企業・団体の出資により成る「南信州観光公社」(長野県飯田市)は、体験型観光による誘客で地域振興を図る第3セクターの株式会社。自然や環境、農業、味覚、伝統工芸、アウトドアスポーツなどさまざまな分野の体験プログラムを約180種類そろえる。

 基本理念は、「地域住民との交流を基調とした本物の体験」を提供すること。本物の体験とは、「地域に暮らす人々の生業やありのままの生活の中に直接飛び込んで、援助や指導を受けながら利用者と受け入れ者が体験を共にし、互いに感動し、心が高まり、そして人間関係構築の好機となるもの」と位置付けている。

 中でも農家民泊は、1998年に飯田市で受け入れを始めた先駆け。現在、南信州地域の約400軒の農家の協力を得て、毎年8千人前後の学生を受け入れている。人間関係づくりの能力を高めるなど、特に都市部の若者や子供たちへの育効果が高いと学校側から評価されている。

 2013年1月に旅行会社「オンタナ旅行」(神奈川県横浜市)を設立した櫻井重さん。経営理念は「田舎と都会を結ぶ架け橋となる代理店」だが、営業2年目に「どのようにしたら魅力ある地域交流を推進できるのか」と悩みにぶつかる。

 その解決策として決断したのが、南信州観光公社での研修。観光ビジネスで地域を活性化している現場を体験し、ノウハウを学習するのが目的だ。観光客を受け入れる地域住民の考えや感情も知りたかった。

 研修は15年1月の10日間。南信州観光公社の高橋充社長らと一緒に、体験教室を実施している釣り場、乗馬コース、果樹園などの各施設を訪問した。農家民泊を行っているリーダーや、民泊や農業体験の受け入れに積極的に応じている農業法人「今田平」のメンバーなどにも話を聞いた。

 修行を糧に、櫻井さんは「都会のシニア世代に対して田舎の魅力を発信していきたい」と意欲を燃やす。南信州で「耕作放棄による田畑の荒廃」と「鹿や猪などによる農作物被害」の問題を直視したことから、今、都会の人々に獣害の深刻さを知ってもらうためのツアー企画も練っている。

 この櫻井さんの南信州観光公社での研修は、サービス産業生産性協議会の社会人インターンシップ「大人の武者修行」を活用したもの。大人の武者修行は、現場で働きながらサービスの極意を学べるのが特徴で、約100社の優良企業・団体から研修先を選べる。

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