「大人の武者修行」は、サービス産業生産性協議会が手掛ける社会人インターンシップ。優良企業・団体の現場で実際に働き、サービス産業の極意を得るのが特徴だ。修行は最短2週間(実働8日間)から可能。約100社の優良企業・団体が受け入れ修行先で、その研修費、交通費、滞在費の3分の2を補助する。
果樹農業の「かきうち農園」(三重県・御浜町)では、さまざまな品種のみかん作りに取り組み、さらにジュース、マーマレードなどの加工品の製造販売にも力を入れる。日本の農業にはこれまでなかったマーケティングを取り入れ、販路の拡大と売り上げの増加に成功している。垣内清明代表取締役は「農園経営は工夫次第で大きな可能性が開ける」と主張する。
観光土産品企画・販売などのTTC(静岡県熱海市)で、農産物直売所「伊豆・村の駅」の販売スタッフを務める田村典靖さん。大人の武者修行を通じて今年2月に15日間、かきうち農園で研修した。「地域や日本の行く末を創造する垣内代表の農業に感銘を受けて志願した。みかん栽培や商品企画の方法はもちろん、農業に対する思いや理念も学びたかった」と動機を語る。
みかんを作るのではなく、「みかんを作る人を作っている」と言う垣内代表。その垣内代表と行動を共にした田村さんは、「社員一人一人のことを常に考えている。この愛情こそが、かきうち農園の強みだ」と極意の一端をつかんだ。
大人の武者修行では、地域活性化策の立案やイベントづくりの達人、東京富士大学(東京都新宿区)経営学部イベントプロデュース学科の須川一幸教授にも弟子入りできる。ある修行者2人は、須川教授が関わっている熊本県・上広地区での農村集落活性化支援事業の現場に入り、地域づくりの技術を習得した。
「無印良品」ブランドの衣料品や家庭用品などを展開する良品計画(東京都豊島区)も修行先の一つ。鳥羽グランドホテルを運営する上野観光(三重県鳥羽市)のリーダー、上野光庸さんが研修した例がある。業務の仕組みを共有化するマニュアル「MUJIGRAM」を自社に取り入れることが目的だった。
修行先約100社とそこでの修行内容については、サイト「大人の武者修行」で一覧できる。
「武者修行者」が、優良企業・団体の真髄を学ぶ。それを自社に持ち帰る。観光業界の人材育成と事業イノベーションを手助けするのが、大人の武者修行だ。