近年、アニメの舞台となった地域を訪れる「コンテンツツーリズム」や「聖地巡礼」などと称される観光振興への注目が高まっている。アニメの制作は、地域や地域資源に関する内容(≒地域情報)などを含め様々な情報を基に作品が制作される。映像コンテンツの製作者は、ストーリーやキャラクターは架空の設定であるが、その舞台は意図的に地域情報を取り込んでいる。アニメの視聴者である観光客は、アニメの映像作品から知り得た地域の様々な情報が基に、モデルとなった地域を訪れ、その現実の様子を探し出し追体験ができることを求めている。
こうしたコンテンツツーリズムの多くの映像コンテンツは、地域外にある制作会社が作成したものである。それにもかかわらず、地域住民らは、地域外部で制作された映像コンテンツを受け入れた地域の中に取り込み、観光客の受け入れ態勢を整備している地域もある。静岡県沼津市を舞台とした「ラブライブ!サンシャイン!!」は、沼津市内の実際に存在する自然景観や商店街が映像の中に登場する。アニメが放映された当時は、沼津市の市民や関係者は、ほとんど関心が無かった。沼津市の市民や関係者らは、アニメを視聴した観光客が沼津市内を歩いている様子をみて、様々な取り組みを実施して、受け入れ態勢を構築していった。例えば、行政らが、映像公開後に住民説明会を開催し、より多くの人びとに対して観光客の受け入れに対する理解を得た。また、沼津に訪れなければ購入することができない缶バッチをはじめ、関連グッズの販売など実施した。その一方で、観光客同士や地域住民といった人々との交流できる場も整備されていたい。特に商店などでは、店内にフリースペースを設けることで、気軽に立ち寄れるようにしていたのである。このように、アニメの関連商品に加え、地域の特産品の購入による地域への経済効果とあわせて、地域に賑わいをもたらすものとなっている。
ただし、地域情報の基となる地域は、映像作品を活用したコンテンツを自由使用できるわけでないことに留意する必要がある。例えば、映像作品を活用したグッズ等の制作・販売には、コンテンツ制作者の許諾を得る必要がある。このように、コンテンツツーリズムのように地域情報を活用した映像コンテンツは、映像の制作者と地域の双方の理解・協力のもとに完成される。したがって、コンテンツを制作した著作者を保護と合わせて、そのモデルとなった地域の保護や発展に寄与する方策が求められるといえよう。
安本宗春氏