コロナ収束後、観光産業復興のキーワードは、「関係人口の創出」であるといわれている。関係人口とは、「長期的な定住人口でも短期的な交流人口でもない。地域や地域の人々と多様に関わる者を指し、ふるさとに想いをよせ地域に貢献する地域外の人材」である。それではどのようにして、その関係人口の創出を図るのか。本コラムでは、その施策について論じてみたい。
旅行前から地域とのつながりを創出する。そのためには、その地域の「人」の力が必要である。「人を訪(尋)ねる地域の周遊」を商品とする。「人」は最大の観光資源であり、観光対象・観光商品に成り得るという理論の実践である。観光地を周遊するのではない。その地に在住する「人」を周遊するのである。その地を代表する高名な方だけではなく、農林水産に従事されている方や、職人さん、煙草屋のおばあちゃんでもいい。時間と場所と受入れ人員を定め、その地におけるその人の生を尋ねるのである。観光で公に生活領域に入り込むのである。リモートではかなわない「会う」という効果を新たな生活様式を勘案した上で商品とする。止む無くその場にこられない参加者にはリモートでつなぐ。それはバーチャルではなく、ネットでつながれたリアルである。「またいってみたい」という従来観光のリピーターではなく、「また会いにいきたい」というリピーターの創出である。そして、人の選定を変更することでさらなるその地のファンが生まれ関係人口が増加していくのである。
人は最大の観光資源である。それは、「他にない個」であるからである。そして人は最大の地域ブランドに成り得るのである。あの人がいる何処の地、そしてその人に会いにいく。観光は世の中の様々な事象とコラボレーションをして価値を生む。医療や健康とのコラボレーションであれば、メディカルツーリズムやヘルスツーリズムと称される。他にスポーツ、ショッピング、ダーク、グリーン、アニメツーリズムなどなど、それらはニューツーリズムといわれて久しい。それでは、人を観光対象・観光商品とした、人とコラボレーションしたツーリズムは何と称されるのであろう。本コラムでは、「グローカルツーリズム」と名づけたい。
大型観光キャンペーンでもない、世界遺産に傾注した観光でもない。些細な日常を非日常として捉え再訪を促すには、「人の力」「人の魅力」しかないと考える。リアルな人の交流を促進するのも観光産業の使命である。そしてそれは数だけではなく、質を伴うものが求められている。観光を語る際の大前提として、観光はお客様を選べない、お金を払って来てくださったお客様はすべてをお客様として歓迎しなければならない、それが観光の特徴であると理解されてきた。しかし、観光はすべての望みをかなえる打出の小槌ではない。これからの観光マネジメントは需要の創造、維持拡大、平準化だけではなく、抑制についても考慮しなければならなくなった。さらに、好ましくない需要を負の需要として、好ましい需要を正の需要として修正する、「需要の修正(旅行者の選別)」にも取り組む必要があると認識される。もはや、地域は急激な観光客の増加は望まない。しかしながら、地域内での消費は必要である。調子のいい考えではあるが、人は多過ぎないが生計がたつ、有益な観光客が訪れる適度な観光が望まれる。
果たしてこのような施策で生計が成り立つのかと自問する。しかしながら観光の食べ放題は、もう流行らない。