新型コロナウィルス(COVID-19)の影響により観光産業が大きな打撃を受けているが、ブライダル産業に対しても多大な影響が及んでいる。公益社団法人日本ブライダル文化振興協会(BIA)の調査によると、2020年度には、およそ28万組の婚礼に対し延期や中止などを含めた影響があったとみられ、業界全体でも9,500億円の損失(前年比でわずか32%)という状況であった。
しかし、最近では徐々に回復の兆しが見えつつある。実際、土日祝日にはホテルや結婚式場などで複数の挙式・披露宴が行われる状況になってきているが、挙式・披露宴の状況は以前とは違うものとなってきていることにお気づきだろうか。
挙式・披露宴の変化としてまず挙げられるのが、招待者数の減少に伴う「少人数化」である。リクルートブライダル総研が毎年実施している「結婚トレンド調査」によると、2001年における全国の結婚披露宴出席者の平均人数は88.6人であったが、2020年の調査では66.3人となっており、この20年間で20名以上減少したことになる。実は、披露宴の少人数化はコロナ禍の影響で一気に下がったのではなく、20年の間、徐々に減少してきたのである。これは、披露宴に際し、新郎新婦が招待客を、以前に比べより厳選しているというのが主たる要因である。かつては「隣組」と呼ばれる地域コミュニティの方々や両親の友人、遠い親戚、職場の上司、果ては地域選出の議員など、幅広く招待されていたものだった。しかし昨今では、新郎新婦により近い方のみを招待し、披露宴では1人でも多くの方と交流することを目指す方向性が主流となり、少人数化していったのである。
こうした流れの中で、ブライダル産業は今回のコロナ禍に見舞われた。密にならないように、また、招待客のことを気遣って新郎新婦は招待客をさらに絞り込むようになっている。そのため、今後は少人数化が加速する可能性が高いといえる。加えて、リモートシステムの普及も今後の少人数化に拍車をかける一因になるであろう。コロナ禍の昨今において、ZoomやGoogle Meet、LINEなどのリモートシステムが一般に普及し、リモート会議などに慣れることによって、リモートシステムが特別なものでなく気軽に利用できるものという認識が広まりつつある。披露宴の場においてもリモートで参加することは今後、一般的な状況となり、遠方の招待客や高齢の招待客などは無理に披露宴会場に来場しなくても参加できるようになっていくであろう。
以前は披露宴があると、新郎新婦をはじめ親族などの招待客の宿泊需要も期待できた。ホテルをはじめとした宿泊施設は、今回のコロナ禍の影響を受け、今後は婚礼商品との関係性を再検討しなければならない。遠方の招待客による宿泊利用より、近隣の招待客による宿泊利用ということに注力する必要性も生じるのではなかろうかと推察する。