中国経済は生産から消費へ
45周年に向けて交流拡大を
中国国家観光局駐日本代表処の首席代表に羅玉泉・前大阪駐在事務所首席代表が就任した。羅代表に中国人の旅行動向、日本とのさらなる交流促進に向けた提言を聞いた。
──中国人の旅行動向の現状は。
「国内旅行も海外旅行も増えている。去年、中国国内を旅行した人が延べ40億人。人口が13~14億人だから、1人平均2回半は旅行をしている計算だ」
「一方、海外旅行は延べ1億3千万人。ここ数年、毎年増えている。香港、マカオ、台湾を除けばタイが最も多く、韓国、日本も多い。日本へは昨年499万人だが、今年のデータを見ると7月までの累計が350万人以上で、年間で600万人という見込みがある」
「中国はこの30年間、経済が順調に伸びている。そして産業構造が変わってきた。今まで製造業に力を入れてきたが、今は第3次産業。特に伸びているのが観光だ。人々の収入が増えるにつれて、観光に対するニーズも高まってきている。生産から消費への転換、国民の消費を拡大させようという国の動きもある」
「中国に『万巻の書を読み、万里の道を行く』ということわざがある。子供をあちこちに連れて行き、歴史文化を学ばせ、視野を広げさせようというものだ」
「今、『爆買い』という言葉を日本のメディアが使っている。ただ、それは一部に過ぎないと思う。中国の若い人たちは自分の国とは違う風景と歴史文化、暮らしぶりに興味を持って異国に行っている。おみやげを買って、家族や友人に配る習慣は確かにあるのだが、決して買い物だけではない」
「今、インターネットに日本を紹介するページがたくさん載っている。今、日本で何がはやっているのか、すぐに報道される。それを見てみんなが興味を持つ。今、中国では日本のアニメ映画『君の名は。』が人気だ。中国ではまだ放映されていないのに人気を集めている」
──中国国家観光局の今年度事業の柱は。
「国内向けには観光に関わる政策の整備。観光地の整備や、観光に関わる人たちにルールと道徳を守ってもらい、観光業を発展させようという取り組みだ。具体的にはバスの安全対策やガイドの教育などに力を入れている。事業者のサービス向上も重点施策だ。中国全域で取り組んでいる」
「海外に向けては、発展する中国、中国の新しいイメージを発信することだ。今年のメインテーマはシルクロード。国が『一帯一路』の構想を打ち出しているが、観光もそれに準じてシルクロードの旅を多くの人々に知ってもらいたいと、PRに力を入れている」
「シルクロードというと西安からウルムチへの陸上のシルクロードを思い出すが、福建省から東南アジア、アフリカへと海路で交流した海のシルクロードもある。この両方をPRしている」
──日本とのさらなる交流促進へ、日本側への注文は。
「昨日、チベットのラサから北京経由で日本に戻ってきた。北京から日本人のおばあちゃんのグループと機内で一緒になった。みんな北京が初めてで、万里の長城、故宮、天安門といろいろ見てきて、楽しかったと言っていた」
「今、経済が伸びたこともあり、中国から日本への観光客が増えている。ただ、日本から中国へは昨年が250万人。この3~4年で100万人減っている。もっと多くの日本の方に来てもらいたい」
「中国と日本は長く友好関係を保っている。中国国家観光局と日本の国土交通省、JATA(日本旅行業協会)、ANTA(全国旅行業協会)も友好関係を保ち、協力して両国の観光業の発展に取り組んできた。これからも協力しあい、相手の国の事情を思って、両国の観光発展に取り組んでいければいい」
──日本は2020年までに訪日外国人客数4千万人を目指している。アドバイスがあれば。
「日本は10年前から観光立国の取り組みを始め、特にこの2~3年で大きな成果がみられた。ただ、それまではアウトバウンドを中心に取り組んできた。インバウンドの方は、まだ経験不足といえるだろう」
「ガイドの教育が必要だ。観光客はガイドを通して相手の国を見る。日本の魅力を正しく伝えられるガイドの養成に力を入れるべきだ」
「多くの外国人観光客にとって、日本の文化に接するのが初めてで、習慣もよく分からない。日本の文化や習慣、マナーを正しく知ってもらう必要がある」
──中国人は観光地や旅館・ホテルでどんなもてなしをされたら嬉しく思うか。
「日本人はサービスが本当に丁寧だ。そこに、片言でも言葉が通じるようになれば、さらに嬉しく思うだろう。日本食は全く問題ない。これから東京、京都、大阪など、大都市以外の地方に観光客が増えてくると思う。日本の田舎に興味を持ったり、地方でゆっくりしたいという気持ちを持っている。おもてなしをしていただけるとありがたい」
──来年は国交正常化45周年。
「交流を拡大するための事業を中国と日本双方で考えたい」
【ら・ぎょくせん】
【聞き手・森田淳】