【観光業界人インタビュー】京都市長 門川 大作氏


京都市長 門川 大作氏

京都観光の現状と課題

知名度高いホテル誘致 無線LANは650ヵ所に

──市の観光の現状は。

 「2013年の観光客数は5162万人となり、過去最高を記録した。特徴は訪問回数5回以上の人が8割、年齢別では50代以上の人が6割に達していることだ。リピーター、シニア層に支えられている。また、外国人宿泊客数は113万人、観光消費額は7002億円となり、こちらもこれまでの最高の数字を記録した」

 「今年7月には旅行雑誌、トラベル・アンド・レジャーの『ワールドベストシティ』ランキングで京都市が1位に選ばれており、関係者が一丸となって取り組んだ成果であると感じている」

──京都観光の強みと弱みをどう捉えていますか。

 「世界100万都市のなかで、京都は千年の間一度も遮断されずにあらゆる文化やモノづくりが継続されている。それが何よりの強みだ。しかし、まだまだ取り組んでいかなければならない課題もある。例えば『一見さんおことわり』の世界。文化を大切にすることも大事だが、外国人旅行者にこうした素晴らしい伝統文化・産業に手軽に触れていただける取り組みが不足している。さらに、京都では宿泊できないという点が観光客の不満の一つとなっている」

 「比較的低価格で泊まれるホテルなどは大幅に増えてきたが、世界的な知名度の高いホテルは少ない。観光客のニーズに合った宿泊施設が大事であり、世界的に知名度の高いホテルの誘致にも力を入れていきたい」

──外国人に人気の京都ですが、方面別ではいかがでしょう?

 「日本を訪れる観光客の出発地でみると、8割近くがアジアからの観光客であるのに対して、京都は欧州、北米、オセアニアからが4割強を占めているのが大きな特徴だ」

──受け入れ態勢はいかがですか。

 「例えば、観光案内標識については東山、嵐山などの主要観光エリアに400カ所以上設置している。また、無線LAN(Wi—Fi)はバス停や地下鉄駅、セブンイレブン、公共施設などにおいて、誰でも無料でインターネットを利用できるようにしており、その数は650カ所以上となっている。今年度は認証方法を簡略化した新しいシステムにより、民間商業施設などへの整備を進めている」

──歩く観光を推進しています。

 「歩くまち京都アプリ『バス・鉄道の達人』の運用を昨年8月から開始した。全国初となるバス到着時刻を予測する機能を搭載システムで、今年2月には外国人観光客向けの英語コンテンツの配信も開始した。言語面の不安を解消するため、京都文化交流コンベンションビューロー等と連携し、24時間対応する多言語コールセンターも設置している」

──市長は景観保全に熱心ですね。

 「京都の優れた景観を守るべく、他に例のないきめ細かな基準を定め、規制(新景観政策)している。例えば屋外広告物については屋上看板・点滅式看板の全面禁止。派手な色の制限、大きさなどを細かく規制している。また、京町家などの伝統的な木造建築物の保全にも努めている」

──先頃、京都観光振興計画2020を策定されました。2020年に外国人宿泊客数を300万人、観光消費額を1兆円にするという内容ですが、今後、どのように進めていかれますか。

 「市民からの意見の募集などを経て、格調高い計画になったと思っている。目標の実現に向けて190を超える事業については、議論を深めてしっかりと実行していく」

──京都ブランドは観光立国の一翼を担っていると思いますが、国に対してはどのような取り組みを望みますか。

 「国に対して、東京オリンピック・パラリンピック等の開催や観光庁の移転を見据えた『観光立国・日本 京都拠点』のさらなる充実などを求めている」

──例えば。

 「ILTM(インターナショナル・ラグジュアリー・トラベルマーケット)ジャパンのさらなる拡充など海外の目利き層の積極的誘致、世界博物館大会などMICEの共同誘致、免税店に関する手続きの簡素化など受け入れ環境の整備─などだ」

【かどかわ・だいさく】
立命館大二部法卒。京都市教育長などを経て2008年2月市長就任。世界歴史都市連盟会長、世界文化遺産地域連携会議会長など兼務。京都市出身、63歳。

京都市長 門川 大作氏

 
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