【観光業界人インタビュー】国土交通副大臣 西村 明宏氏


国土交通副大臣 西村 明宏氏

訪日2000万人への備え 急務

民泊サービス 野放図は問題、厚労省と検討

 西村明宏国土交通副大臣が16日、国交省交通運輸記者会の共同インタビューに応じた。テーマは観光。西村副大臣は、政府が5日に決定した行動計画「観光立国実現に向けたアクション・プログラム2015」などを踏まえ、観光施策への意欲を語った。

──「アクション・プログラム2015」のポイントは。

 アクション・プログラムは、総理からの指示で毎年改定している。観光がダイナミックに変わっていることを踏まえ、長期ビジョン、目標を持って進もうということだ。策定に向けては、関係省庁の副大臣らで構成する観光立国推進ワーキングチーム(座長・西村副大臣)で議論した。

 ポイントの一つ目は、訪日外国人2千万人時代への備え。2020年を前に2千万人が達成できそうになってきた。ただ、受け入れ態勢がまだ十分ではなく、しっかりと備える必要がある。リピーターになってもらえるような環境づくりに取り組む。空港、港湾のCIQ(出入国管理など)体制の強化、宿泊やバスなどの供給量の確保、Wi—Fi(公衆無線LAN)の整備や多言語対応の拡充などを進める。

 二つ目が「地方創生」への貢献。地方に雇用を生み出し、地方創生に魂を吹き込む。地方創生を動かすその中心組織として日本版DMO(観光地域の経営、マーケティングを担う組織)が重要になるので、その態勢づくりなどをお手伝いする。道の駅の観光拠点としての機能強化、広域観光周遊ルートの形成などにもしっかり取り組む。

 三つ目は、観光を日本経済をけん引する基幹産業に育てることだ。地方の免税店を2万店規模に増やすなどして、旅行消費の拡大を進める。同時に、日本の歴史、文化などを見てもらうために質の高いプログラムを用意する。長期滞在につなげる戦略も練る。2千万人の年には外国人の旅行消費額を4兆円に増やす。

──特に重視する施策は。

 今年、訪日外国人旅行者が1500万人を超えるかもしれないという状況の中で、受け入れ環境の整備が大事だ。空港や宿泊の容量がボトルネックになってはいけない。航空機材や座席数の問題はもとより、地方空港を含めた全国の空港を活用できるようにCIQ体制を強化する。宿泊では、東京、大阪のホテルは客室稼働率が80%に達している。これを地方へと広げていく。さらにホテルに比べて旅館の受け入れには余力があるので、旅館の魅力を海外に発信していく。貸切バスについても、営業区域の拡大を9月まで延長した。需要を把握して迅速に対応していきたい。

 地方の課題に対しては、地域の観光関係者を集めて「地方ブロック別連絡会」をつくったので、官民一体で取り組みを推進したい。特に、外国人に地方に行ってもらうために、広域観光周遊ルートとして7ルートを認定した。今後5年間、受け入れ環境整備、交通アクセスの円滑化、海外への情報発信を集中的に支援していく。また、地方の集客の力としては、スノーリゾートなどの活性化も進めていく。

──震災からの東北の観光復興については。

 私の選挙区(宮城県3区)は東北。復興に取り組んできたが、インフラ整備が終わっても、仕事がなければ、みんな地元を離れてしまう。沿岸部の観光の魅力などを発信し、仕事を生み出す必要がある。観光情報のポータルサイト「東北物語」で魅力を発信したり、モニターツアーを実施したり、語り部ガイドの研修会を開いたりと取り組んでいる。近く国、地方、民間の代表などで「東北観光復興加速化会議」を開催するので、いかに人を呼び込み、何を売り出すのか、現地の意見をしっかりと聞いていく。

──旅館業法の許可を受けずに、インターネットを介して住宅などを宿泊用に提供する民泊サービスが広まっているが、どう考えるか。

 野放図なのはいかがなものか。今のままの状況は決して好ましい状況ではない。ある程度、衛生、環境、防犯面を考えた枠組みをつくる必要があると思うが、具体的には厚生労働省と連携して、実態を把握した上で対応していく。

 一方で、(マンションの空き家などを活用する)国家戦略特区の特例措置については、旅館業法の適用除外が認められている。自治体の条例制定が要件だが、条例を制定した自治体はまだなく、実際には動いていない。

 方向性として外国人、日本人ともに民泊は増えると思う。関係省庁の考えを集約して精力的に議論していく。

【にしむら・あきひろ】

国土交通副大臣 西村 明宏氏

 
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