地域新会社の経営方針
人のつながりを生かし 団体とネット販売強化
日本旅行の東北営業本部が今年1月20日分社し、「株式会社日本旅行東北」として発足、4月1日から業務を始めた。初代社長の大野雅利氏に新会社の経営方針を聞いた。
──新会社での業務が4月に始まった。現在の状況は。
「登録や手続き事項が非常に多く、少しバタバタしたが、旅行に関する業務は従来とそんなに変わりなく行っている。新会社に移行したことで社員みんなが心機一転がんばっており、団体受注でも今年に入り、昨年よりいい状況で進んでいる」
──新会社の概要は。
「東北6県をエリアに、現在13支店。販売高規模は国内旅行約57億円、海外旅行約10億円となっている」
──日本旅行の地域分社は北海道に次いで2社目。地域密着による販売拡大が期待されるが。
「2つの地域密着が考えられる。ひとつは人事と採用面。例えば秋田支店には秋田県出身者、青森支店には青森県出身者というような人事が、分社化により比較的容易にできるようになった。地元出身者の投入は販売拡大につながると思う。もうひとつはお客さまとの関係。本社が東京にあるのと仙台にあるのとでは、お客さまに与える印象が違うはずだ。お客さまから親近感を感じていただけると思う。『東北に根をおろしてしっかり営業するんだ』『地元とお付き合いをするんだ』という気持ちがうまく伝わればいい」
──東北エリアの旅行市場の現状は。
「他のエリア同様、厳しい状況だ。ただ、会議で支店長の話を聞くと、今年の2月ぐらいから、企業のインセンティブ旅行がだいぶ動いてきたようだ。東北は人口減少率が高く、市場が縮小傾向なのは間違いない。ただ、総体的なマーケットは減ったとしても、他社との競争で仕事を取っていくなど、チャレンジすることはまだまだたくさんあると思う」
──新会社になり、社員の意識は相当変化したか。
「転籍をするわけだから、労働条件なども変わってくるので、意識も当然変わらざるを得ないだろう。ある面では危機感を持って取り組んでいるので、それが先ほど申し上げた団体の受注拡大につながっていると理解している」
「転籍に関する作業が2月にあった。『日本旅行』にとどまるか、新会社に移籍するか、社員に選択してもらった。若手の社員は全員とどまってしまうのではないかと不安だったが、結果として、若手社員のほとんどが新会社に移籍してくれ、そうでなかった者も相当悩んだ末の結論だった。新会社に移籍し、東北に残った社員からは『がんばりましょう』と言ってもらい、非常に心強く、うれしかった。こんな作業を1カ月間やっていたので、その間、営業力の低下が当然表れると思っていたが、むしろがんばりにつながった」
──販売拡大へ、新会社ならではの施策は。
「今年最大のミッションである『団体営業』と『インターネット販売』をしっかり行う。東北というのは人のつながりが非常に重要なので、人脈を使ったセールスを徹底的に行う。家族や親戚だって自分のセールスの味方だ。知人を通して旅行をする人を紹介してもらったり、情報をもらったりすることが重要だ。それから、先ほど地域密着の話が出たが、地域のいろいろなサークルに入ったり、行事に参加したりするなどを率先して行う必要がある。当社の秋田支店には竿灯を担いでいる者もいて、実際、そこからの仕事をいただいている(笑い)。一方、旅行業の生き残りをかけた取り組みとして、団体はMICE団体へのシフトとネット販売の強化を併せて取り組んでいく」
──行政などと連携した、域内への観光客の受け入れ事業については。
「東北においても観光産業が経済・地域活性化に与える影響が大きく、各県や市の関係部署の方々が懸命の努力をされている。その取りまとめとも言うべき組織『東北観光推進機構』に営業力抜群な当社の社員が出向しており、『東北への誘客』の様々な施策・営業を行っている。行政の皆さんや観光推進機構の取り組みには積極的に参加させていただきたいと考えている。私自身30年間は首都圏にいたので、その人脈をフルに活用いただければ幸いだ。さらに日旅連(日本旅行協定旅館ホテル連盟)の方々との連携。営業推進委員会など連盟の会合でともに考えていきたい」
──日旅連の会員と話をすることは。
「東北支部連合会の会長で、ホテル華の湯(福島県・磐梯熱海温泉)の菅野社長には非常にお世話になっている。支部連合会のすべての支部の総会で、会員の皆さんに『新会社を応援してほしい』と言っていただいた。本当にありがたかった。このほか古くから日本旅行を応援いただいている多くの会員の方々。皆さまには本当に頭の下がる思いだ。直江兼続の『義』と『愛』ではないが、感謝・感謝だ。皆さん経営者なので、経営に関することを教えていただいたり、お客さまの動向を聞いたりとか、お会いして非常に勉強になる」
──出身は。
「実は、東北ではなく千葉県。こちらに来てまだ1年しかたっていないが、地元の繁華街を活性化させる会に参加するなど、地元に溶け込もうと努力している」
──休日は何を。
「スポーツクラブに行ったり、普通電車で行けるところに行って、風景の水彩画を描いたり。広瀬川の四季、岩出山にある有備館など絵になる、リフレッシュできるところがあり、印象に残っている」
【おおの・まさとし】