【観光業界人インタビュー】日本観光振興協会理事長 見並陽一氏


日本観光振興協会理事長 見並陽一氏

日本観光振興協会のかじ取り

2団体合体の仕上げを 着地型観光の定着図る

──理事長就任の打診があったのはいつですか。

 「5月末ぐらいだ。正直いろんな思いが交錯した(笑)。日本観光協会とTIJ(日本ツーリズム産業団体連合会)の合体協議ではTIJ側のメンバーとして臨んでいた。合体も道半ばであり、その意味では成し遂げるいいチャンスをいただいたと思う。また、その責任の重さを痛感している。同時にやり甲斐のある仕事と感謝している」

──両団体は昨年4月に合体しましたが、まだ道半ばですか。

 「日観協とTIJは地域、産業というそれぞれの観点から観光振興を図ってきた。成り立ちも違えば目的も異なるが、両団体が1つになってこそ、観光業界を代表する組織、ナショナルセンターができると判断し、まず合体することにした。とはいえ、すぐ合体効果が表れるわけではなく、いろんな問題も出てくる。そうした問題は合体後、時間をかけてクリアしていく計画だったが、3月に東日本大震災が起こった。それどころではない。まず復旧・復興だとして、この問題は後回しになった。震災から1年が過ぎ、ようやくこの問題に着手することができるようになった。理事長として、合体効果を皆さんに具体的に示せるよう、全身全霊で取り組む。また、協会と一緒になって良かったと言われるよう、私自身結果を出さなければと思う」

──JR東日本では観光に深くかかわってきたようですね。また、民間から公益法人に移ることに戸惑いはなかったですか。

 「観光はまさに地域。観光経済新聞社のテーマにあるように、観光立国の鍵を握るのは地域の取り組みだと思う。JR時代は地域の皆さんと一緒になって観光資源の掘り起こしや観光地づくり、観光客を集めることに奔走してきた。日観協の軸足は地域にある。今までやってきたことが生かせると思うし、その意味ではこのポストに全く違和感はない」

──当面の課題は何でしょう。

 「1つは着地型観光の定着。地域活性化につながるだけに、協会としてもこれまで以上に力を入れていく。決め手となるのは地元ならではの情報収集力と企画力だが、地域の人たちがやりやすいような環境を整備したい」

 「もう1つは人材育成。協会はこれまで、観光地域づくり人材育成研修事業や産学官連携による地域観光人材育成事業などを手がけてきたが、この分野は業界の将来を左右するだけに、一層力を入れていく。先頃、地域の事業組織の個々の取り組みや直面する課題について情報交換を行い、課題解決に役立つ情報の共有や研修・研究の場として『観光地域づくりプラットフォーム推進機構』も設立されており、人材育成に効果を発揮するのではないか」

───地域の動きをつかむにはどうすべきでしょう。

 「北海道から九州まで8支部があるが、支部活動をもっと強化し、地域の新しい動き、情報を収集する機能を高めたい。加えて、北海道観光推進機構や東北観光推進機構など広域観光組織と連携を密にし、情報の共有化を図りたい。これからは広域観光がますます重要になってくる。1つの観光資源だけで大勢の観光客を引きつけるのは難しい。いくつか組み合わせ、観光客にその都度感動を与えることが大事だ。訪日外国人観光客も視野に入れ、東・名・大だけでなく、第2、第3のゴールデンルートを作り、競うべきだろう」

───秋には「旅フェア日本2012」が開催されます。一大イベントですね。

 「11月9日から3日間、東京・池袋のサンシャインシティをメーン会場として開かれる。旅フェアの原点に返り、新しい切り口で、来場者に旅の魅力を伝えたい。また、出展者にとっても『変わった、出て良かった』と思われるような内容にする。期待していただきたい」

───旅館とのお付き合いも広い。

 「JR時代、旅館さんとは膝を交えてのお付き合いをさせていただいた。日本の観光にとって旅館さんはなくてはならない存在だ。日観連と国観連の統合で誕生する新団体への期待も大きく、旅館業がどう変わっていくのか注目している」

【みなみ・よういち】
大阪大卒。日本航空を経て1992年JR東日本入社。東北地域本社営業部長、取締役鉄道事業本部営業部長、常務鉄道事業本部副本部長などを経て、2011年6月常務観光振興(全般)。12年6月現職就任。三重県出身、62歳。

日本観光振興協会理事長 見並陽一氏

 
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