人材確保と育成が急務
──観光復興と風評被害の現状は。
「まず、今年4〜6月に開催したふくしまデスティネーションキャンペーン(DC)では、たくさんの方々にお越しいただき心から感謝申しあげる。さて観光の現状については、東日本大震災の直後の2011年の観光客入込数は10年の約5700万人から3500万人、震災前の約6割まで落ち込んだ。その後、官民連携した観光復興キャンペーンなどを実施し13年にはNHK大河ドラマ『八重の桜』の影響などで、震災前の84.5%、約4800万人まで回復した。14年はその反動で、県全体では2.9%減少の約4690万人、10年比の82%となった。教育旅行では09年度は、延べ70万人泊を超える宿泊数だったが、11年度で13万2千人泊と震災前の18.7%まで落ち込み、14年度には約35万人泊、震災前の49.4%。インバウンドでは14年が約3万7千人と、10年比で42.6%と依然として厳しい状況だ」
──東北一丸となった連携の強化は。
「東北観光推進機構のプロモーションと取り組みには期待をしている。国、東北、都道府県のエリアを超えた行政機関の『真の広域連携の強化』が極めて重要であり、それが観光復興のためのポイントになると考える。今後、インバウンドを中心に、積極的に連携し福島に人を呼び込んでいきたい」
──オリンピック・パラリンピックの開催は。
「オリンピックは子どもたちに夢を与える世界で一番の注目イベント。東京五輪も当初は『復興五輪』といわれた。われわれも復興に一生懸命取り組んでおり、東日本大震災からの復興の状況を世界の皆さんに見せる絶好の機会。遠藤大臣が福島を気にしてくださっており、本当にありがたい。正式な決定を心待ちにしている」
──観光の力で地方創生はどう思いますか。
「観光は産業の中でもさまざまな部門の事業者が関与しやすい産業であることから『観光の力で地方創生の冠』が出たのではないか。交流人口を拡大し消費を増やし、地域経済の活性化を図ることを政府が考えたことはありがたい。『観光』という切り口で地域づくりを進め、福島県の復興を進めていくことが大切であり、福島での消費の拡大に力を入れるビッグチャンスだと考えている。今後の取り組みとしては、人材の確保と育成が急務だ。日本版DMO(デスティネーション・マーケティング/マネージメント・オルガニゼーションの略)のあり方の研究の中で、観光による地域づくり、地方創生を担う人材の育成も積極的に支援していく」
──アフターDCへの取り組みと今後の課題は。
「今年4〜6月に開催したDCをきっかけに生まれた地域主体の取り組みを継続させるため、アフターDCは本番DCと同様の規模で取り組んでいく。DC特別企画や新たな魅力を打ち出した地域等の成功事例を全県で展開するとともに、定着化することで、さまざまな分野にDCの取り組みを波及させていくことが重要であると考える。『観光は福島の復興のけん引役』であり、風評払拭と風化防止のための大きな柱になると思っている。原子力災害で大きな影響があるのは間違いないが、それを理由に観光客はなかなか戻らないと結論に直接結び付けることなく、復興と再生を期すために、『ふくしまプライド』を胸に、これからも継続して取り組んでいきたい」
【はしもと・あきよし】
東北大法卒。1983年福島県採用。総務部人事課長、総務部次長(人事担当)、県中地方振興局長などを経て、15年4月から観光交流局長。55歳。