津軽海峡交流圏の拡大を
──地域活性化の基本的な考えを教えてください。
「青森県は毎年1万人以上のペースで人口が減少している。また、40代、50代で亡くなる人も多い“短命県”だ。『交流人口』という言葉があるが、青森県では『県内総時間』と言っている。県民が県内で使う時間と、県外からの来訪者の滞在時間を合わせた時間で、これが増えれば経済活動が活発化する。そこで、平均寿命を伸ばす健康づくりを進める一方、観光の取り組みにも力を入れている」
「観光をもっと伸ばすことによって青森県民が経済的に潤い、故郷にさらに自信を持って、ここで生きていこうという気持ちが高まる。これが地方創生だ」
──青森県の観光の魅力は何でしょうか。
「東京や京都、大阪などとは違って、『知られていない』という面白さがある。特に名古屋から西の人、あるいは海外の人にとってみれば、全く未知の土地だ。人が旅をするのは、そこに自分の知らない何かがあるからだ。青森県は、竜飛岬やリンゴ、大間のマグロをはじめ、良質な観光資源をたくさん持っている。四季の自然の美しさ、多様な食べ物のおいしさ、人情あふれる人と出会う楽しさをもっと知ってほしい」
──来年3月に北海道新幹線が開業します。
「北海道と本州の間には『ブラキストン線』という生物相の境界線が走っている。新幹線がこの心理的ブラキストン線を突破する。現在、新青森・函館間は特急列車で約2時間かかるが、新幹線によって新青森・新函館北斗間が、約1時間で結ばれる。青森県では県全域と函館を中心とする道南地域とで、『津軽海峡交流圏』という一つの交流圏域を形成しようとしている。圏域内の人口は約184万人。総生産は約6兆円。この交流圏はいずれ観光圏域になり、観光客数は約4500万に達する」
──来年7〜9月には「青森県・函館デスティネーションキャンペーン(DC)」も実施されます。
「これを最大のチャンスとしてとらえ、青森県と道南地域を巡る新しい旅の価値を国内外の観光市場に提案していきたい」
──地方創生の新たな取り組みはありますか。
「外国人旅行者を呼び入れるために『立体観光』という仕組みを作った。日本航空やJR東日本などと連携し、台湾の旅行者が航空便か新幹線を選択し、青森県へ行くことができる旅行商品の仕組みだ。今後、船や道路網にも広げる。この仕組みは九州や四国などほかの地域で応用できる」
「物販でもすごいことが始まった。ヤマト運輸と組んで、『A!プレミアム』というサービスを始めた。青森で午前中に獲れたイチゴやホタテなどが翌日の午前中に九州まで届くようにした。それまで到達率7%だったが、85%になった。要するに東京ではなく、地方と地方を結ぶ。さらに、香港やシンガポールなど海外に送る新たなチャレンジも今やっている」
「青森県は地方創生の言葉ができる前から、県内総時間の考え方で、県内に人の時間と経済をどう集めるかに取り組み、その主体として観光と物販を積極的に進めてきた。地方創生の可能性はわが青森にある」
【みむら・しんご】
東京大学文学部卒業。青森県百石町長、衆院議員を経て、2003年7月から現職。青森県百石町出身、59歳。