【観光業界人インタビュー】JTB商事 社長 池田浩氏


池田社長

新社長としてのかじ取り

宿泊施設の苦悩を熟知 経営安定化に貢献したい

 ――JTB商事の主な事業は何か。

 「旅館・ホテル商事事業と一般商事事業の二つがメインだ。旅館・ホテル商事事業では、旅館・ホテルで使用されているあらゆる消耗品や装備品を取り扱っている。そうした物販だけではなく、新・増・改築の企画設計や施工管理、各種コンサルなどの建装デザイン事業も手掛けている。この旅館・ホテル商事事業は、当社の売り上げ全体の7割を占める事業の柱となっている」

 「一般商事事業では旅行者への海外・国内土産や旅行用品、カタログギフト『たびもの撰華』などを販売するほか、JTBとお付き合いのある企業を中心に販促品を提案している。なかでも『たびもの撰華』はJTBの店頭でも売れており、セールスプロモーション用として企業にも好評だ。他のカタログギフトと違うのは品物に加えて、宿泊も入っていること。料金によって、日帰り入浴や体験のプランもある」

 ――旅館・ホテル向け事業の特徴は。

 「タオルやアメニティといった消耗品をはじめとして客室やレストラン・食事処の小物備品、家具、電化製品といった装備品、建装デザイン事業まで、宿泊施設の課題解決と魅力向上のためのメニューは年々拡大している。多種多様な質の良い商品の仕入先も数多く持っている。一つの窓口で宿泊施設の必要とする商品やサービスをトータルにスピーディーに提供できるワンストップサービスが最大の強みだ」

 「今、国や地方自治体の法改正や補助金制度など宿泊施設にとって複雑な事案が多くある。当社は全国展開しているのでいろいろな情報が入ってくるから、営業の社員が宿泊施設に有益な情報を提供してお役に立つというアプローチもしている。宿泊施設は、商品・サービスに関してコストや効率、質の面でこだわりが強い。そのような相談にしっかりと乗れる営業社員がいるのが強みだが、その営業レベルをもっと上げていかなければならない」

 ――今後、どんな点に力を入れていくのか。

 「旅館・ホテル商事事業では建装デザイン事業を強化する。また、日系海外ホテルへの事業領域拡大にもチャレンジしたい。ここ数年、日系ホテルがミクロネシアやハワイ、アジアに進出しているなかで、開業に向け一括した商品供給の要望が多い。国により輸出入や販売に関する法規制が異なり、課題は多いが、海外ホテルへの事業拡大を推進したい」

 「訪日インバウンドが増え続けているので、一般商事事業では空港などでのインバウンド観光客向けお土産品の販売をビジネス領域としていく。ネット販売が拡大するなかで従来型の海外土産や旅行用品の販売に加えて、企業のセールスプロモーションに関わる事業を強化する。また、『JTBショッピング』という『旅』をテーマにした物販サイトを立ち上げたので、その販売を拡大していきたい」 ――4月に就任した。新社長としての抱負をうかがいたい。
 
 「当社は営業社員の営業力と提案力が一番大事だ。さらに向上して、よりお客さまに信頼されるようにしたい。また、質の良い商材を提案するために仕入先との関係を維持、強化していく。旅館・ホテルの皆さまのために、仕入先の皆さまやJTBグループのために、そして社員や社員の家族のために、2020年以降も安定した成果を出せる会社を目指している」

 ――これまでJTBの旅行事業本部副本部長やJTB旅ホ連の専務理事といった職務を担当し、旅館・ホテルとは関わりが深い。

 「国内旅行政策、宿泊商品政策、販売、旅ホ連というそれぞれの仕事で旅館・ホテルの皆さまには大変お世話になってきた。今度は全く違う立場だが、皆さまが応援してくれてとてもありがたい。『旅館』や『温泉』『和食』『日本のサービス』は海外にない日本の財産だ。宿泊施設はいろいろな事情で経営が厳しくなって、形態が変わったり廃業したりもしている。旅館・ホテルが繁栄しないと日本の観光発展は継続しないと思う。JTB商事にはJTBとは違う旅館・ホテルへの支援の仕方がある。旅館ホテルのいろいろな苦労や課題も知っているので、その解決をお手伝いし、宿泊施設の皆さまの繁栄に貢献できるよう努めたい」

 池田 浩(いけだ・ひろし)氏 1958年10月31日生まれ。千葉県出身。上智大学法学部法律学科卒業後、81年に日本交通公社(現JTB)入社。旅行事業本部国内企画部長、朝日旅行常務取締役、JTB執行役員旅行事業本部副本部長、JTB協定旅館ホテル連盟専務理事、JTB首都圏社長などを歴任。2018年4月から現職。

【板津昌義】

 
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