【観光立国・その夢と現実 20】小泉改革の国民金融公庫廃止に反対2 小原健史


 小泉改革の「民のことは民に任せよ!」との大号令で、われわれ生活衛生16団体の会員の資金繰りのよりどころ「国民金融公庫」は風前の灯となり、自民党の厚生労働部会でも通らず、勢い与党の一角の公明党の冬柴幹事長への陳情となった。

 生衛業界の三根会長の挨拶、小宮山専務の陳情内容の説明に続き、副会長の私から次のように言った。「今回の小泉改革の民間でやれることは民間の手に委ねようとの政治改革には大賛成です。しかし、われわれ生活衛生業界は、小規模零細事業者が多く、かつ、国民の生活に密着した美容・理容、クリーニング、飲食、旅館などの業種です。この業界が資金的に困った場合、融資を受けられるのは唯一、国民金融公庫だけです。この国金がこの世の中からなくなれば、われわれは何を頼りに事業をすればよいのか分からない。ぜひ、国民金融公庫を残していただきたく、よろしくお願い申し上げます!」と。

 陳情が終わり陳情団の数十名が帰り支度をしていると、冬柴幹事長いわく「旅館業の会長さん、ちょっと残って下さい」と。何のことかと思いきや、数名の公明党の副幹事長と共に隣の部屋に入り、開口一番「あなたが言ったことを、もう一度話してくれ!」ときた。私は「国金がなくなれば零細事業者が多い生活衛生業界は資金繰りに困ります。公明党の支持者もたくさんいる生衛業界を何とか助けてください。国民政党の公明党として!」と必死で哀願した。

 冬柴幹事長は言った。「分かった。自民党と話し合う! ところで小原会長、キミは選挙か何かに出なかったか?」「はい、前回の参議院比例区選挙に旅館代表で出馬しました。しかし、御党のお陰で落選しました!」。一瞬、数名の副幹事長が殺気立った。

 しかし、当の冬柴幹事長は笑いながら言った。「キミのことか! 以前に自民党の幹部から聞いていた。旅館業には強烈なモノ言いの奴がいると。なんでうちの党のせいにするの?」「幹事長、自公連立は良いですが、選挙の時も、選挙区は自民党、比例区は公明党!と徹底すると自民党の比例区の候補は立つ瀬がありません! 私が落選した選挙の時も然りで、比例区ですから私は全国を回ります。その間に自民党の参議院議員候補の選挙カーが私の地元の嬉野市でも『選挙区は〇〇に!比例区は公明党に!』とやる。私の旅館の周りだけ『比例区は小原健史を!』と。そのようなことで私は落選の憂き目を見ました。幹事長、私の落選の落とし前を付けて下さい! 国金を残してください!」。冬柴幹事長は男だった。怒りもせず、じっと私を見て、にこやかに一言「分かった!」と。

 そして、この難癖のような陳情は、その後、形を変えて「日本政策金融公庫」として日の目をみた。もちろん、生衛業界のみならず商工業や農林漁業など各方面からの同じ内容の陳情は山のようにあったことであろうが、確信的に公明党に陳情したのは生衛業界だけではなかったかと思う。

 (佐賀嬉野バリアフリーツアーセンター会長)

 
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