【観光立国・その夢と現実 21】カラオケ著作権料とNHK受信料 小原健史


 今回は、旅館ホテル業界の団体や組合に加盟した場合のメリットについて述べたい。

 事業を始めると、さまざまな関連団体から多くの加盟の依頼が舞い込んでくる。

 そのほとんどに「加入のメリットは何ですか?」と質問すると「加盟していただくこと自体がメリットです云々(うんぬん)」などと意味不明な回答が多い。しかし、旅館ホテル業界に関しては明確なメリットがある。それは「カラオケ著作権の割引制度」であり「NHK受信料の割引制度」である。

 カラオケ著作権とは何かといえば、歌や曲などの音楽については、その作詞家や作曲家に著作権があり、個人的な鼻歌などには著作権は問われないが、営業的に音楽を利用する施設には生演奏やカラオケに音楽著作権料が発生する。

 この音楽著作権料は、著作権を持つ作詞家や作曲家から委託を受けた団体などが(某シンガーソングライターなどは委託した覚えはないとも言っているが?)その著作権料の徴収をすることとなっており、受託した日本音楽著作権協会(JASRAC)と旅館業界は宴会場等のカラオケ著作権料を「払え」「払わない」の大論争を繰り広げた。

 それは、約40年ぐらい前のことであるが、九州では熊本県の丸小ホテルの小山先輩がその反対のリーダーであった。

 当時の旅館業界は、「なぜ、宴会場やバーでカラオケを歌うのに著作権が発生するのか?」から始まり、「作詞家や作曲家が不明な民謡や一部の童謡についても支払わねばならないのはなぜか?」「徴収の基準が宴会場の畳の数が基準では納得できない」などの主張があった。

 一方のJASRAC側は「反対するのは自由だが、音楽著作権料についての最高裁の判決は、既に〔音楽を営業的に利用する者は支払うべし!〕との判決が出ている」と一歩も引かない。その最高裁の判決について弁護士に相談すると確かに〔東京の赤坂のキャバレーが生演奏の音楽著作権で最高裁まで争ったが敗訴している〕ことが分かり、われわれ旅館業界は、作戦を変更して、徴収方法で各地の旅館組合が協力するので団体割引の交渉をして当時の旅館3団体とJASRAC側と妥結した。その団体割引分が個々の旅館ホテルへの加盟のメリットになっている。

 NHKの受信料についても似たような闘いの歴史がある。これは、私が全旅連会長の時代から後任の佐藤信幸会長の時代へと永い時間をかけて妥結した。
 NHK受信料については以前は都道府県別の各地の放送局と各旅館ホテルの個別契約の時代が永く続いていた。一方で、NHKには政府の国の資金が投入されていて行財政改革の一端であろうか受信料の徴収には厳しい姿勢で臨むように督励がなされていたようだ。

 当時の旅館3団体では、特に全旅連の佐藤会長は世界中の国営放送の受信料を調査し、客室数当たりで最も低率なイギリスのBBC方式を取り上げて交渉を重ねた。最終段階のある会議で、自民党の観光産業振興議員連盟の細田博之会長とNHKに詳しい川崎二郎代議士のお2人が立会人で、NHKの理事2名と旅館3団体側の会長3名と顧問の私が受信料の最終の話し合いを行った。

 旅館側からは海外の国営放送の受信料の例を持ち出し、総客室数の20%程度での契約を主張するが、NHKサイドはなかなか首を縦に振らない。そこで、細田先生が「小原君、顧問の立場で何か意見は?」と問われた。その瞬間に私の政治的交渉の血がタギッた。私は、まず細田・川崎両先生に敬意を表した後、「NHKさん、旅館3団体の会長がここまで主張しているのに、全く歩み寄らないのはなぜですか? もし、本日の会議で応じてくれなければ、われわれ旅館側は、今日から、請求書の中にNHK受信料と記載して1人当たり数百円を徴求するよ! そして、この間の経緯を新聞社にでも週刊誌にでも投げ込んで〔宿泊客が自宅で払っている受信料の二重取りを旅館ホテル業界に強要するNHK〕とか、〔旅館ホテルの客室稼働率を顧みないNHK受信料のぼったくり!〕とか書いてもらうよ! それでもいいか!」と声を強くした!

 (佐賀嬉野バリアフリーツアーセンター会長)

 
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