【観光立国・その夢と現実 22】カラオケ著作権料とNHK受信料2 小原健史


 前回に引き続き旅館ホテル業界団体への加入の大きなメリットである「NHK受信料の団体割引」について述べる。

 観光産業振興議員連盟会長の細田博之先生とNHKに詳しい川崎二郎先生の立ち合いの場で、旅館3団体の会長とNHKの理事2名の前で、NHKを刺激する強烈な言葉を吐いた私に対し、細田会長は(内心、ニヤリと笑われたような気もしたが…)「小原君のいつもの恫喝(どうかつ)が出たので今日はこれまで!」と会議を打ち切られた。

 恫喝とは〔おどして、恐れさせること〕との意味であるが、以前にこのコラムに掲載した「特別地方消費税」の撤廃運動の際に身に付けた、旅館業界の悲願であるこの税の撤廃のためには〔殺人と強盗など以外は何をやってでも目的を達成する!〕という強烈な経験則をもったわれわれ全旅連青年部のOBたちの強い意思は、相手が誰であれ他の交渉事でも発揮されたのだ。

 私は言いたいことをズバズバ言うのであるが、当時の全旅連の佐藤会長はまとめる立場で、その後、さまざまな折衝の苦労を重ねられて、次のように結論づけられた。

 旅館ホテル業界のNHK受信料の団体割引は、〔旅館ホテルの客室数の40%以下の数値に衛星放送の料金をかけ合わせた料金〕で妥結し、かつ、集金業務は各都道府県の旅館ホテル組合事務局で担当することとし、その手数料も受信料から割り引くことになり、各県連事務局の収入も増加し、現在、組合活動の一定の原資ともなっている。

 一方のNHKとしては、旅館ホテルを1軒1軒集金に回る煩わしさから解放され、双方ともWIN&WINの状況となった。

 この団体割引が決まると、その後、今まで旅館ホテルの団体への加盟を歯牙にもかけなかった大手ビジネスホテルチェーンの本部からも、NHK受信料の割引のメリットを求めて、全旅連本部へ加入の申し入れが打診され、さまざまな条件を付加してその加入は認められることとなった。

 このことで、一気に100軒、200軒単位で加盟件数が増えたと言っても過言ではないし、まさに旅館組合への加入のメリットここにあり!の典型であった。

 今回の「カラオケに関する音楽著作権の団体割引」や「NHK受信料の業界の団体割引」については、各地の旅館ホテルが1軒では解決できない問題を業界団体が数の力でまとめて交渉し、その結果が個々の会員のメリットになって反映されるという同業組合ならではの好事例である。

 私が所属する異業種の他の団体では、なかなかこのような直接的な加入メリットは認められない。

 宿泊事業を営む経営者にとって「旅館ホテル組合に加盟して何のメリットがあるか?」の問いについての回答は、前述のようなことであるが「旅館業界の全国本部は何をしているのか?」の問いについては、明快に「旅館ホテル業界の法制・税制をできる限り業界に有利にするためにある」と言える。また、そのために立法機関の国会議員や法律を執行する行政機関の政府=中央省庁と常に接触し、さまざまな情報を受発信し、業界の目的に向かって突進・努力することが重要である。

 さらに、このような業務を進めていくと、その担当をした人々は、苦悩し喜怒哀楽を感じつつ、その胸に宿るのは「われわれ旅館ホテル業界の代表を1人でも良いから国会議員として送り込み、もっと優位に、もっと簡潔に業界の思いを法制や税制に反映したい!」との思いが芽生える。

 (佐賀嬉野バリアフリーツアーセンター会長)

 
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