【観光立国・その夢と現実 23】参議院比例区選挙へ出馬!1 小原健史


 平成16年、私は旅館業界代表として参議院比例区選挙に出馬したが、結果として10万もの票を頂いたものの、残念ながら敗北に終わった。

 このことについては、現在に至るまで17年の年月を経過したが、今更ながら全国各地の旅館ホテル業界の皆さん、生活衛生業の皆さん、地元の佐賀県の皆さん、そして、ご支援を頂いた各方面の多くの皆さんに改めてお礼とお詫びを申し上げたい。

 出馬のことの始まりは、その前年に、私が全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会の会長に就任した際のあいさつ回りに起因する。それは、日頃から旅館業がお世話になっている自民党・清和政策研究会の森喜朗会長の事務所に伺ったのだが、森会長は私の姿を認めるや否や「ああ、キミがいた! 小原君、参議院選挙に出ないか」と極めてストレートなお誘いを受けた。私は「有難いお言葉ですが、私は全旅連の仕事をするために会長になり、そのご挨拶にきましたので…」とサラリとお断りした。

 しかし、数日後に、森会長から再び呼び出され「この前言った選挙の件、出馬してくれるよね! 国鉄と旅館で合わせて1議席とれるよ!」と強く迫られた。その場も固辞したが、かなり立腹され、3回目の呼び出しの際は、既に逃げられない状態になり、旅館業界や地元の自民党佐賀県連に何の相談をする時間もないままに私の立候補が決められていった。

 旅館業界では「国会議員の中に業界人が1人は欲しい」という考えが以前からあり、この申し出を歓迎する人もいたが、大方は「あまりに唐突だ!」とか「政治家になるために全旅連会長になったのか!」との猛烈な非難もあり、先輩から強いお叱りを受けたこともあった。

 致し方なく出馬したものの、選挙当日までわずか10カ月の期間しかなく、全てがドタバタの中で選挙戦に突入した。各都道府県では政治パーティーを開催していただき私の演説を聞き、選挙資金を供出していただいた。キャッチフレーズは特消税撤廃の経験から〔やればできる!〕とし、全国を走り回った街演車は、私の好きなサザンオールスターズの「希望の轍(わだち)」をテーマソングにして走り回った。

 全国各地で大変お世話になったので特定の場所を記載するのは、他県の方に失礼で非礼でもあるが、あえて記載すれば、北海道では当時の全旅連副会長の米澤さんが自分が運転をしながら、札幌を中心に、登別、函館、旭川、阿寒湖などを案内していただき、各地でたくさんの旅館ホテルのスタッフの方々に握手し、青年部OBの友と抱き合ったことは忘れはしない。そして途方もなく広く大きな大地を独力で運転を続けていただいた米澤さんのご尽力には頭が下がり感謝の念を通り超えて深い敬意を感じた。

 また、新潟県では野澤幸司理事長の号令一下、北は瀬波温泉から南は赤倉温泉まで約700キロメートルをわずか1日で、8時から20時までで踏破した。随行車が7~8台もあり、その街ごとに運転手の青年部員が交代し「おらが街の裏道は任せろ!」とばかりに飛ばしに飛ばして走破することができた。

 途中、長岡市では尊敬する田中角栄先生の銅像の下で「観光立国と地元新潟県の観光振興」を訴えて演説した。7月の選挙であったが、日が落ちて赤倉温泉に到着、そこで演説させていただき、同行していただいた「新幹線の神様」と呼ばれ国鉄OBの野沢太三先生に地元の政治家の有力者の方々が北陸新幹線の並行在来線の問題で陳情されたことにも立ち会わせていただいた。

 全国的に上記の2件と同じ思いであるが、特に全県を走り回った新潟県の旅館ホテル組合の皆さんには返せぬほどのご恩を感じている。(元全旅連会長)

 
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