【観光立国・その夢と現実 35】どうする!2023年 小原健史


 2023年、宿泊業や観光産業はどのように立ち向かえば良いのであろうか? 簡単に答えが見つかるわけではないが、思いつくままに列記したい。

 新型コロナ感染症については触れたくもないが、観光産業や宿泊業界は、過去に経験のないウイルスによる極めて大きなダメージを受けた。その経験から言えることは〔人間にとって、生命に関わることよりも重要なものはない〕という当然の理で、あえて言えば、命懸けの旅行などをする人はいないということでもある。死に至る可能性のある病の前には、人は「外出自粛」に従い、「密になること」も避けた!

 この厳然たる事実は、ポストコロナの時代になっても、観光や宿泊の際には“できる限り他人との無用な接触を避ける”であろうし、従来よりも衛生的な環境を好むであろう。そして、旅館ホテルの食事の提供のあり方や客室の一定の衛生面の維持は不可欠で“衛生的な安全性が売り”になる施設も現れるであろうし、ポストコロナになっても以前には戻らないということでもあろう!

 さて、わが国では、過去数年にわたり「観光立国」を標榜(ひょうぼう)し、海外からのインバウンドを受け入れ、それが年々再々増加し約4千万人になろうとした。しかし、コロナ感染症で訪日客はほとんどゼロに帰した、この復活は急務である。

 インバウンドの観光振興を再開するに際し留意したいのは、過去の教訓として“オーバーツーリズム”で日本の歴史や文化、世界的に独特な温泉文化を、大量の来訪客の力が押し潰すような状況を再現してはならない。できれば観光庁や宿泊業界の協力態勢の中で〔お客さまを際限なく引きずり込むような営業を脱し〕地域間でバランス良く配分し、観光地や温泉地ごとに適度な受け入れ人数を設定することをやるべきではないか? それは、低レベルでの営業精神(=もうかる時は最大限にもうけよう!)に任せず、コロナの体験を踏まえ、長期的な戦略の上に調整機能をもったシステムを構築できないかと夢想する。

 何を調整するのか? 〔低料金であるが多人数で一定の売上高を稼ぐ施設〕と〔高料金で少人数を受け入れる施設〕を地域ごとに調整するか? 同様に地域内でそのような施設のバランスがとれないか? 旅館ホテル業の基本的な商品である〔施設設備・料理・人的なサービス〕の三つの資源のいずれかに注力をした〔最高級の設備を誇る〕〔料理が最高級の〕〔人的なサービスが鉄壁〕などを意識した事業体の構築もあるべきだ!

 言いたいことは〔どこも判で押したような同じ内容の旅館ホテルではなく、独自性〕を発揮し、地域同士の特色も生かしたい。そして、それはお客さまの嗜好や選択肢にかなうことが第一の条件でもある。

 人的なサービスについては、現在、どこにおいても「人手不足で“全国旅行支援”でお客さまが突然増えたものの、人手不足で致し方なく受け入れ可能な客室しか使用していない」などの声を聞く。現場をリタイアした私にも「仲居さんか板場の若い人が欲しいが誰かいないか?」との要請もある。人手不足の解決法はある。〔それは、給料・賃金を上げることである〕。こう書けば、読者から「そんなこと分かっている! それができないから困っている」という声が聞こえそうであるが、もう一度言う。〔人手不足の解決には給料・賃金を上げること〕である。

 同じことを2回記載した意味を考えてほしい! 「人は欲しいが給料は安いよ!」では、働く人が来るわけがないではないか。ましてや若者が! 業界全体の問題とか旅館組合のバランスとかに逃げずに、逆にみんなで給料を上げて、それで目標の利益・売り上げをたたき出せる経営体質に代えなければ、この〔人手不足〕の問題は解決しない。世間から〔旅館ホテル業は、給料・賃金は高いもんね!〕との情報が行きわたらないと働き手が来るわけはない!

 さて、海外では“ポストコロナで最初に行きたい国、最も行きたい国はニッポン”であると報道されているのを聞いた。で、あれば、わが国の旅館ホテルにとって“チャンス”到来である。どうする?2023年!

(元全旅連会長)

 
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