【観光立国・その夢と現実 9】特別地方消費税撤廃運動2 小原健史


 このコラム執筆の契機となった〔特別地方消費税の撤廃運動の記録〕の第2弾を記載する。

 対策本部では〔消費者対策班〕〔業界団体対策班〕〔国会対策班〕の3班を編成して、勇躍、念願達成のために挑んだ。

 消費者対策班では、その運動のポイントを「お客さまが宿泊料金の支払いの際に特消税については、その金額が利用料金の3%なのでその意識が低く、特消税撤廃運動の意味も目的も分かってないようだ」との判断があり、次のようなさまざまの方法で、特消税の存在を知らせる運動を展開した。

 それは、(1)100万人署名運動(2)「逆さFOCUSの発行」や「フーテンの寅さんのポスター」の展開である。

 100万人署名運動では、全国各地の都道府県の旅館組合が主になって役員、青年部、女将さんたちが頑張りに頑張って、撤廃運動の最終段階で100万人の署名を獲得することに成功した。著者も対策本部長として、東京の都心、大阪の中心部、博多駅の街頭などの署名運動に参加した。個人的に印象に残るのは、博多駅前の署名運動だったと記憶するが…、真冬の横殴りの雪空の中で九州ブロックの青年部員や女性経営者の面々が、雪を溶かし吹雪を止めるほどの熱意で署名を獲得する姿に私は打たれた。それは内心(いつもは生意気なあいつが、あんな角度の最敬礼をして署名をお願いしている、すごい!)と驚き、その人物の傍らに駆け寄り「〇〇君、ありがとう! すまん!」と声をかけたところ、その人物は「先輩、頑張るバイ! この税金はなくさんといかん、署名でもなんでもやるしかなか!」と、寒さのために足をバタつかせながらニコッと笑った。

 日頃は業界活動にあまり興味がないと思っていたその後輩の熱意あふれるそのときの姿に、私は思わず涙腺がドッと緩み目の前の光景が涙ににじんだ。九州でさえそのような寒さだったので東北や北海道、そして日本海側の雪国での街頭署名運動はさぞかし困難を極めたものと思う、猛暑の夏もしかりである、今さらながら全国の旅館ホテル関係者各位に心から御礼を申し上げたい。本当にありがとうございました。

 対策本部では、特消税撤廃運動を世に知らせるために、広告広報のプロの専門企業の博報堂に効果的なキャンペーン企画を依頼した。その費用は当時の旅館ホテル業界の運動にとっては破格の金額であったが、旅館3団体(国観連、日観連、全旅連)の本部から一定の資金を捻出し、その上に対策本部の幹部が全旅連や青年部の協賛業者や、各方面に資金カンパで奔走し総額で1億円を超える資金が確保できた。このことも私には驚異的なことであったが、その中の一つの出来事に、「新潟の豪農の館」での事件?がある。

 それは、旅館団体の大会のエキスカーションの際であったが、当時は、特消税撤廃運動を始めたものの資金不足で私自身がこれ以上の運動展開はできない!と苦しんでいるタイミングだった。

 そんな中、本紙観光経済新聞の江口恒明社長(故人)が旅館業界の大幹部の2人の人物に対し「対策本部の若いもんが特消税撤廃で必死に頑張っているが資金不足と言っている。あんたたち業界の大物が、せめて資金の面倒は見てあげないでどうするんだ!」と真顔で抗議された。すると、そのお2人は「なんだ、小原君、金が足りないのか?」と驚かれ「分かった、すぐに動く!」と約束していただき、地元に帰られて栃木県旅館組合から一定の金額の〔特消税撤廃運動資金〕が寄付され、すぐに群馬県や他県へ伝播した。

 このようなこともあって旅館3団体では改めて特消税撤廃運動資金が拠出され、前述のようなキャンペーンも実施可能となったのである。また、観光経済新聞の江口社長ご自身からも撤廃運動にご寄付を頂いたが、業界活動を批判もするが応援もするという現行一致の誠にありがたいご寄付であった。(以下、次号へ続く)

 (佐賀嬉野バリアフリーツアーセンター会長)

      

 
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