東京都の受動喫煙防止条例が6月27日の都議会本会議で、自民党を除く賛成多数で可決、成立した。国会で審議中の健康増進法改正案より厳しい独自基準が盛り込まれており、各方面に波紋を投げかけている。
焦点の一つとなっていたのが飲食店での対応だ。従業員を雇用している場合は、広さに関係なく店内を原則禁煙とし、「喫煙専用室」でのみ喫煙を容認した。
国の改正案が客席面積100平方メートル以下などの飲食店を喫煙可能とするのに対し、格段に厳しい内容となっている。
6月1日、東京の新宿駅周辺で200人規模の抗議デモが行われた。都生活衛生同業組合連合会や都たばこ商業協同組合連合会などによるもので、業界団体の意見や懸念を都政に届けるために行進した。
プラカードには「お客様と事業者に『喫煙』『分煙』『禁煙』選択の自由を」「中小事業者に打撃、死活問題」といった訴えが書かれていた。
喫煙専用室を設ければいいだけ、という声もあるが、そのお金も余裕も中小・零細事業者にはない。訴えは届かなかったが、こうした声があることを行政側は忘れてはならない。丁寧な対応が求められている。
小池百合子都知事は、「たばこを吸う人も吸わない人も快適な東京を目指す。条例をきっかけに『健康ファースト』の都政を進めたい」と述べている。条例成立を受け、都は今後段階的に施行し、東京五輪・パラリンピックが開催される2020年4月に全面施行する方針だ。罰則は5万円以下の過料。
受動喫煙防止問題に対しては旅館業界も無関心ではいられない。本紙が実施した受動喫煙対策に関するアンケート調査によると、喫煙ブースや禁煙室の設置など、ほとんどの回答旅館で何らかの対策を行い、施設内全てを禁煙に踏み切った旅館もあった(5月12日付紙面に掲載)。
飲食店と同様、客商売であるだけに対応も難しいようだ。「宴会などで喫煙希望は多い。禁煙を理由に断れば次に利用してもらえなくなる」と二の足を踏む旅館は少なくない。
受動喫煙防止の機運は東京五輪・パラリンピックへの対応の一環として高まっており、その傾向はますます顕著になりそうだ。都に限らず、防止策を検討している自治体も増えつつある。
例えば、千葉市も罰則付きの受動喫煙防止条例を検討している。都の条例と同様、店舗の面積に関係なく、従業員を雇う飲食店内を原則禁煙とする方向となりそうだ。
個人の嗜好にまで規制の網をかけることに疑問の声もあるが、たばこの害を考えると、止むなしという気もしないではない。
【内井高弘】
館内に喫煙ブースを設ける旅館も増えつつある(写真と本文は関係ありません)