「日本の夜が楽しめない」「夜も楽しめる観光地や店が少ない。時間を持て余してしまう」―こんなことを口にする外国人観光客が増えているという。
海外では夜遅くまで開く劇場や美術館などがあり、夜間観光の選択肢は多い。訪日客を対象にした調査でも、日本旅行の不満点に「ナイトライフ体験」を挙げる人が少なくない。
「夜遊び」に抵抗感を持つ普通の日本人(普通とは何、と突っ込まれると返答に困るが)からすると余計なお世話だが、観光先進国を目指す以上、こうした声を無視するわけにもいかない。
夜の街を楽しんでもらい、消費を促す「ナイトタイムエコノミー」という言葉も登場し、夜の街づくりに目を向ける自治体も増えつつある。
夜の観光素材が豊富にある東京で、歓楽街を持つ新宿と渋谷の両区がタッグを組んで、外国人観光客をターゲットに据えた消費喚起事業「TOKYOナイトタイムパスポート」を実施することを決めた。
事業期間は3年間。まず、来年1~2月に外国人が両区の飲食店などで使えるバウチャーチケット(金券)を発行。1枚5千円で、3千円と2千円の半券が付いており、これを飲食店で提示すればチャージ料を含む金額分のメニューを楽しめる仕組みだ。
千葉市は今年8月、「宴タメ千葉2018」と題したイベント(実証実験)を市内の飲食店などで開催。ナイトタイムエコノミーの一環で、熊谷俊人市長の選挙公約の一つだったとされる。
多くの外国人が訪れる京都でも夜の楽しみ方を提案する動きが出ている。京都市はぐるなびと連携し、夕方以降も茶道や日本舞踊を体験できる店などを紹介するサイトを開設している。港町・横浜でも、昭和の面影が残る野毛地区で「おもてなしナイト」と称した実証実験が行われた。
国内、海外を問わず、旅行先で夜の街をぶらぶら歩くのはとても魅力的だ。例えば、台湾の夜市。真夜中にも関わらず多くの人が屋台をひやかし、食事を楽しんでいる。外国人も同様だ。
「夜中でも飲食や娯楽を健全に楽しめる社会はそれだけで(集客の)大きな“武器”になる」という観光関係者もいる。
温泉地の中には宿泊客向けに、安心して入店できるスナックやバーを紹介するチラシを作っているところもある。日本人を視野に入れたものが多いが外国語表記のチラシも登場しているようだ。
日本の魅力の一つは治安の良さだが、それをさらに生かして、夜の楽しみ方という選択肢を加えられれば、日本の観光はさらに厚みを増すのではないか。
【内井高弘】