2018年に日本を訪れた外国人観光客は3119万人となり、過去最高を記録した。東京五輪・パラリンピックが開かれる20年には4千万人との政府目標の達成は「射程に入ってきた」(菅義偉官房長官)。
世界保健機関(WHO)の人口統計(16年時点)によれば、3119万人は世界45位のマレーシアの人口とほぼ同じ。単純比較はできないが、1年間でマレーシアの人全部が日本を訪れたというイメージだ。
前年比伸び率は8.7%で2桁アップとはいかなかった。地震や台風などの自然災害がなければもっと伸びたといわれるが、その中でこれだけの伸び率を確保したのは評価されよう。
好調要因として、(1)堅調な国内経済(2)為替レートの安定(3)格安航空会社(LCC)の普及(4)世界的な経済の拡大によって旅行を楽しめる所得層の増加―などが挙げられようが、日本が持つさまざまな魅力に外国人が強い関心を示し、国を挙げてアピールしてきた結果ともいえる。
訪日客の大半は中国、韓国、台湾、香港が占め、合計すると2288万人に達する。最も多いのは中国人で、その数838万人。全ての国・地域を通じて初めて年間の訪日数で800万人を超えた。
心配なのは韓国だ。徴用工やレーダー照射問題などを巡り、日韓関係はいまぎくしゃくしている。昨年、754万の韓国人が日本を訪れたが、訪日機運が萎むことがないよう望む。これは日本人に対しても言えるが、感情のしこりはなかなか拭えないのも事実で、難しい状況にある。
一部の国に頼りすぎるのもよくない。政府は欧米豪からの観光客をもっと増やそうとしているが賢明な判断といえる。親近感を持って来てくれる個人客を増やすことが重要である。
外国人がストレスを感じることなく日本を旅行するにはクリアすべき課題も多い。そのため、国際観光旅客税(出国税)の徴収も始まり、環境整備のための財源の手当てもできた。一方で外国人増によるトラブルも出てきており、こうした問題にも税収を充て対策を強化すべきだ。
何より、観光業界をはじめとして、日本そのものが訪日客増の恩恵を受けなければならない。インバウンドがビジネスとして成立しなければ受け入れ側のモチベーションは上がらない。
18年の訪日客の旅行消費額は4兆5千億円となった。この額が大きいのか小さいのか評価が分かれるが、1人当たりの旅行支出は0.9%減の15万2594円にとどまっているのである。どうお金を落としてもらうのか。政府任せにせず、業界の自助努力も欠かせない。