【観国之光 244】タトゥー問題 W杯で対応迫られる 本社論説委員 内井高弘


温泉を楽しみに来日する外国人もいる。タトゥーを理由にした受け入れ拒否は少々残念だが…(写真と本文は関係ありません)

 9月に開幕するラグビーワールドカップ(W杯)日本大会まで半年を切った。訪れる人に快適に楽しんでもらうための取り組みも進んでいるだろう。2020年の東京五輪・パラリンピックを成功に導くためにも、ラグビーW杯を利用してさまざまなチャレンジを試みてほしい。

 気になるのがタトゥー(入れ墨)の受け入れだ。日本では反社会的勢力を連想させるとして敬遠されがちで、旅館やホテルでは入浴を断るケースも多い。

 海外ではタトゥーを文化やファッションの一部として捉えることも多く、われわれ日本人とは意識が異なる。ラグビー選手の中にもタトゥーを入れている人が少なくない。そう考えれば、文化が異なる外国人も温泉を楽しめる環境を整えていくべきではないかと思う。

 ましてや温泉に依存している観光地にとってはどう対応するのかが大きな課題となっている。「タトゥーを理由に入浴を断られた」「日本人から差別された」などとネット上でつぶやかれると、イメージが悪くなりかねない。

 おんせん県を自負する大分県。温泉の魅力を紹介するホームページ(HP)を先ごろ開設した。別に珍しくもないといわれそうだが、タトゥーがあっても入れる温泉を検索できるのが特徴だ。

 別府や大分、日田など県内15市町村の旅館や立ち寄り湯など約160施設のうち、タトゥーが入っていても入浴できる約100施設を検索できるという。HPで事前に情報が得られれば安心して入浴でき、不愉快な思いをせずに済む。

 大分県の広瀬勝貞知事は記者団とのやり取りで、「タトゥーをお断りしていた時代と、タトゥーの意味がそもそも変わってきたところがある。そこをどのように判断するかで考え方が決まるのだろうと思う。タトゥーがあっても入浴してもらって良いのではないかという意見もあるが、他方、他のお客さんが嫌がるから困るという意見もあり、なかなかまだ悩ましい気がする」と話している。

 試行錯誤の中での判断であることがうかがえるが、県レベルでタトゥー問題に対応しようという動きは評価される。

 旅館・ホテルの中には「タトゥーを入れた人の入浴を認めていいと思うが、他のお客さまから苦情が来た時にどうするかという問題がある。一方で、タトゥーを入れた人の人権は無視するのかといわれると困る」と心情を吐露する経営者も。

 ラグビーの国際統括団体は、選手にタトゥーを隠すよう指示する方針という。開催国への配慮なのだろうが、何となくすっきりしない。タトゥー問題はなかなか難しい。
    

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