限られた温泉資源を有効に活用しようと、集中管理・配湯を導入している温泉地が少なくない。環境省によると、集中管理・配湯を実施している温泉地は150カ所以上とされる。
ところが、「集中管理・配湯の設備の多くは導入から30~40年程度経過しているため効率が悪くなっている」と同省温泉地保護利用推進室。漏湯や故障のリスクが高まっているというのだ。
また、温泉は地域固有の熱源であり、熱エネルギーとして高いポテンシャルを秘めている。が、供給するための設備が老朽化すればそのポテンシャルを十分に発揮できない。
同省は「設備の更新に際し、高断熱配管やIoTなどによる配湯自動制御装置を導入することで高いCO²(二酸化炭素)削減効果が見込まれるが、導入に必要な費用がその障害になっている」と認める。
そのため、「温泉熱の有効活用が進めば、温暖化対策や省エネに効果がある」として、設備の更新を支援する方針を打ち出している。「温泉供給設備高効率化改修による省CO²促進事業」と呼ばれるもので、「老朽化した設備を新しくしたいが、資金がない」という温泉地や地方公共団体などは検討に値するのではないか。
具体的には、「温泉供給設備が老朽化している」「設備の改修などを検討している」「設備などの光熱費を安くしたい」「CO²排出量を削減したい」と考えている自治体や民間団体にお勧めと同省。
対象事例は温泉配管、貯湯槽、ポンプ、タンク、動力制御盤の設置などの更新、および計画策定としている。
補助内容は、(1)省エネに寄与する部材・装置への改修費用を支援(補助率は補助対象経費の2分の1を支援)(2)改修のための計画策定費用の一定額を支援(上限1千万円)―となっている。補助金の実施期間は19年度から23年度の5年間を予定している。
同省は「省エネ効果が高い設備に更新することで温泉街を中心として地域全体の低炭素化が図れ、全国の温泉地の低炭素化と資源管理を同時に解決できる」と効果を期待する。
温泉は日本の文化であり、世界に誇る観光資源だ。温泉を目的に日本を訪れる外国人観光客も増えている。温泉が有効に活用され、なおかつ省エネに貢献できるとあれば反対はしない。が、ちらつくのは地熱開発の問題だ。「今回の事業と地熱開発を結びつけるのは考えすぎ」といわれればそれまでだが、地熱開発に敏感な温泉地もある。
別問題ならば利用するのもあり、か。補助金や助成金はうまく活用するのに越したことはない。
【内井高弘】
温泉の集中管理・配湯は枯渇を防ぐ重要なシステムだ(集中管理を導入する下呂温泉)