2002年10月に施行された「身体障害者補助犬法」をご存じだろうか。盲導犬、介助犬、聴導犬を補助犬と定義、公共施設や交通機関、不特定多数の人が利用する商業施設などに受け入れを義務付けた法律だ。
厚生労働省は店舗などが補助犬を受け入れていることを表示するための「補助犬ステッカー」を作成、配布し、法で補助犬が同伴できることの周知に取り組んでいる。
身体障害者補助犬は犬番、認定番号、認定年月日などを記載した表示を付けている。厚労省によると、今年3月1日現在、全国に盲導犬は941、介助犬は65、聴導犬は68頭いる。
厚労省は「補助犬はきちんとしつけられ、清潔に保たれている。旅館・ホテルなど宿泊施設では上り口や部屋の隅で待機するよう、ユーザーの管理のもとで訓練されている」という。
とはいえ、旅館・ホテルに限らず、全般的に補助犬受け入れは進んでいないようだ。補助犬専用のトイレを設けるなど理解を示すホテルもあるが、その数は決して多くはない。「盲導犬の同伴を申し入れたところ、予約を断られた」という話は時折耳にする。
また、補助犬法そのものの認知度も高いとはいえない。
日本補助犬情報センター(横浜市)が飲食店や宿泊施設など、サービス業に従事している人に限定した、補助犬受け入れに関して調査したところ、補助犬法の名前も内容も知らない人が70%に上ったことが分かった。全国の1241人が回答した結果で、法施行から17年が経過しているにも関わらずこの低さ。関心がないのか、周知の努力が足りないのか。
補助犬を必要とするのは、当たり前だが日本人だけではない。世界中にいる。ここで問題になってくるのが、海外からの補助犬使用者の扱いだ。
特に、来年の東京五輪・パラリンピックでは海外から多くの人が訪れるが、その中には補助犬使用者も含まれる。海外から日本を訪れる補助犬については、これまで各補助犬団体に判断が委ねられ、統一した受け入れ基準はなかったとされる。
このため、同省は受け入れのためのガイドラインを作って対応することにした。昨年11月に都道府県に通知、運用を始めた。具体的には、日本の基準と同等の補助犬と認められる場合には「期間限定証明書」を発行。証明書のある使用者については、日本の補助犬と同様、施設などへの同伴を拒まないよう理解と協力を求めている。
宿泊施設にとって、補助犬の受け入れは課題の一つといえる。日本人、外国人を問わず、障害者にやさしい施設であることを期待したい。
身体障害者補助犬同伴の啓発のためのマーク。多くの場所でこれが貼られるのが理想だが…