住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行されてから、6月15日で1年になる。新法が既存の宿泊業者にどんな影響を与えるのか、宿泊の流れがどう変わるのか動向が注目された。
法規制によって問題物件(違法民泊)が減少するなどの効果があった。都市部では民泊宿泊者による騒音やゴミ出しなど、マナー違反によるトラブルも起きているが、法の根幹を揺るがすような大きな混乱もなく1年が経過した感がある。
観光庁によると、民泊の届け出件数は6月7日時点で1万7301件、届け出住宅数は1万6319件となっている。ちなみに、住宅宿泊管理業者の登録件数は1698件、仲介業者は63件だ。
家主自らが接客し、宿泊客とのコミュニケーションを重視する物件もあるが、最近では企業などの法人が運営する物件が増えているという。ビジネスの色合いが強まっている。
例えば、レオパレス21は昨年12月、保有物件を民泊専用施設として自社で運営すると発表した。民泊の営業日数が180日以下と定められているため、マンスリー契約などの短期契約を活用しながら物件の運営をしていく。こうしたケースは今後も増えそうだ。
観光庁によると、6月15日から今年3月末までの民泊宿泊者数は98万9235人、1人当たり宿泊日数は平均2.8泊で、延べ宿泊者数は273万4073人泊となっている。
宿泊者は都市部に集中し、延べ数でみると東京都、北海道、大阪府の上位3位までで全体の7割強を占めている。
届け出件数も地方では伸び悩んでいる。観光客が多く、収益性の高い地域に集中するのは仕方がない。が、新法は人口減少で増加する空き家や空き部屋を活用し、地域活性化につなげる目的もある。
一般の民家に泊まりながら、その土地の日常に触れられるのが民泊の魅力の一つであるのなら、地方の民泊の普及を進めることを検討すべきだろう。もちろん、新法の下での適正な運用が前提だが。
既存の宿泊業界は民泊、特に違法民泊に警戒を強める。
全旅連は先ごろ開いた全国大会で大会宣言を採択。民泊については「住宅を活用した民泊の利用者が急増しており、中小組合員は少なからず影響を受けている」としたうえで、「違法民泊施設については断固として取り締まりの強化を求める」と強い姿勢を示した。
180日ルールと、自治体の上乗せ規制が民泊の普及を妨げているとの指摘もあるが、まだ試行錯誤の段階にある。当面は現状のまま推移するのが妥当ではないか。
民泊新法施行から1年。事業として成り立つまでには課題も多い(レオパレスの民泊物件)