熱戦が続くラグビーワールドカップ(W杯)日本大会。日本代表の活躍もあって、予想以上に盛り上がっている。試合会場以外でも、国内外のファン同士が肩を組み、ビールを酌み交わす姿がみられる。
組織委員会によると、9月20日の開幕戦(日本対ロシア)から12試合を終えた時点の観客動員数は延べ42万人を超えた。開催各都市16カ所にある無料のファンゾーンは7日間で約27万人が楽しんだという。
W杯を機に日本を訪れる外国人は50万人ほどに上るといわれている。日本人のファンと合わせると、実に多くの人が全国12会場に足を運ぶ。「試合の前後は満館状態」とうれしい悲鳴を上げる宿泊施設がある中で、「まさしく特需。終わった後が不安」という施設も。
客室不足を補うため、一般家庭の空き部屋などを提供する「イベント民泊」を実施している自治体もある。ある県では、イベント民泊の参加家庭を募集したところ、90軒ほどの応募があり、400~500人の宿泊先を確保したという。
頭を悩ますのがタトゥー客の対応だ。おもてなしのために期間限定で受け入れる施設がある一方、「お断り」を貫く施設もあり、対応が分かれている。
日本ではタトゥーに対する嫌悪感はまだまだ強い。東京五輪・パラリンピックではもっと多くの外国人が日本を訪れる。日本側の対応に理解を示す人ばかりとは限らない。どう対応するのか、議論を深めるべきだ。
日本流のおもてなしに外国人が称賛するニュースが後を絶たない。特に、会場となった地方の人々のおもてなしの数々はファンばかりか、選手も感動している。
鹿児島市では南アフリカ代表が寿司(すし)作りに挑戦、山口県ではカナダ代表がそば作りを体験した。東京・町田市ではナミビア代表がリス園でのえさやりも。選手もリラックスした表情をみせていた。
外国のラグビーファンは総じておとなしく、紳士的といわれるが、浮かれて羽目を外す外国人もゼロとはいえない。
電車内でラグビーを模したプレーを行ったり、歓楽街でいきなりスクラムを組んだり、コンビニではレジに並ばず店内で大合唱を始めたり―。一部の心ない外国人の行為なのだろうが、東京五輪・パラリンピックを前に、「大丈夫か」と戸惑いの声もあがる。
これだけ大勢の外国人が日本を歩き回るのは滅多にない。良し悪しは別として、さまざまな影響を及ぼしている。不満を持つ外国人もいるだろう。そうした声を丹念に拾い、今後に生かすことも必要だ。称賛に満足していてはいけない。
熱戦が繰り広げられるラグビーW杯。試合会場以外でも盛り上がり、外国人との交流も深まっている