【観国之光 272】観光復興支援 政府の迅速な対応を評価 本社論説委員 内井高弘


紅葉シーズンたけなわ。台風などの影響で客足の減少に悩む観光地もあるが、美しい紅葉を見に行ってもらいたいものだ(写真は那須塩原の「紅の吊橋」。写真と本文は関係ありません)

 秋の行楽シーズンも終盤。紅葉は見頃を迎え、観光地はどこもにぎわいを見せている。と言いたいところだが、台風の19号による記録的な大雨の影響は観光地にも深い爪痕を残し、関係者の表情はいまひとつ晴れない。

 土砂崩れなどで観光客の“足”となる鉄道や道路が寸断され、有名温泉地では配管の破損で温泉が旅館・ホテルに供給できない事態も起こった。「復旧作業が進み、落ち着いてくれば客足も改善されるだろう」と今後に期待を寄せる声もある。

 政府も事態の深刻さを認識し、7日には首相官邸で「令和元年台風19号非常災害対策本部」の会議を開催。台風15号や19号、その後の豪雨などによる一連の災害を受け、被災者の生活やなりわいの再建に向けた施策を盛り込んだ「対策パッケージ」を決めた。

 安倍晋三首相は会議での議論を踏まえ、「今後とも顕在化する課題には、スピードを持って万全の対応を取っていく。切れ目なく財政措置等を講じることで、被災自治体と一体となって復旧・復興に全力を尽くす」と、心強い言葉を述べた。

 8日、19年度予算の予備費から1316億円余りを充てることを閣議決定した。

 観光需要喚起に向けた対策では、被災地域に宿泊する旅行商品の代金や宿泊費について、1日当たり最大5千円を補助することにした。

 対象となるのは今回の台風で災害救助法が適用された14都県(岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨、長野、静岡)で、国はそれぞれの地域のキャンセルの状況に応じて補助金を配分する。

 観光庁では12月初旬ごろからの開始に向け各都県に内容を通知する方針で、来年3月末まで利用できるようにする。年末年始はもちろん、それ以降の旅行で使ってもらいたい考えだ。

 ある自治体の観光担当者は「いわゆる『ふっこう割』で、観光需要がどのくらい喚起されるか分からないが、旅行に目を向けるきっかけにはなりそう」と歓迎する。

 このほか、SNSやメディアを通じた観光地としての魅力や被災地域の正確な情報発信、航空会社や旅行会社との共同広告などを展開し、送客を支援する。

 以前、この欄で「被害を受けた地域の速やかな観光復興を後押しする制度のようなものができないものか」と書いたが、制度うんぬんはともかく、今回、支援体制が間を置かず打ち出されたことは評価できる。あとは自治体、観光業界のやる気にかかっている。


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