【観国之光 284】改正健康増進法施行 受動喫煙対策を強化 本社論説委員 内井高弘


改正健康増進法の全面施行で、愛煙家の嘆く声も聞こえてくる(写真と本文は関係ありません)

 受動喫煙対策を強化する改正健康増進法が4月1日、全面施行された。飲食店やホテル、職場、旅客船など多くの人が利用する施設は原則屋内禁煙になる。悪質な違反者には罰則もあるだけに、しっかりと守っていく必要がある。

 新型コロナウイルスの感染拡大が進む中、世界保健機関(WHO)は「感染した際の重症化リスクを高める」として禁煙を呼び掛けている。

 一度も喫煙をしたことのない人と比べて、喫煙したことのある人の重症化リスクは1.7倍、死亡のリスクは3.2倍になるという海外の論文もある。

 自身はもちろん、周囲の人の健康を守るためにも、法施行を喫煙に対する考え方を改めるきっかけとしたい。望まぬ受動喫煙による肺がんや脳卒中で亡くなる人は、日本の場合、年間1万5千人に上るとの推計もあるのだから。

 改正健康増進法は施設管理者により厳しい罰則が規定されている。喫煙者が喫煙禁止場所で喫煙した場合の過料は30万円以下、施設管理者が紛らわしい標識の掲示や喫煙室の設置基準違反などをした場合は50万円以下となる。くれぐれも注意したい。

 帝国データバンクが約1万社を対象に2月に実施した「企業における喫煙に関する意識調査」によると、改正健康増進法や各自治体での受動喫煙防止条例の施行によって自社の業績にどんな影響があるか尋ねたところ、「マイナスの影響がある」は12.9%で、56.4%が「影響はない」と回答。「マイナスの影響がある」企業を業種別にみると、旅館・ホテルが39.3%でトップとなっている。理由の一つは「対応するために莫大な費用がかかる」からだ。

 厚生労働省によると、今や国民の8割が非喫煙者。タバコの臭いを嫌がる人は多く、客室での喫煙を認めない施設が増えている。そのため、喫煙専用室の設置は欠かせないが、その費用もばかにならない。

 受動喫煙防止対策助成金制度というものがある。喫煙専用室などを新設した事業所に国が整備費を助成する制度で、4月の法施行を前に申請件数が増えているという。

 中小企業や個人経営の飲食店、宿泊業者などが喫煙室を整備する場合、全国の各労働基準局に申請すれば、審査を経て、費用の2分の1を100万円を上限に支給する。

 改正健康増進法は東京五輪・パラリンピックを視野に入れた法律で、国際オリンピック委員会やWHOが提唱する「タバコのない五輪」の実現を目指した。オリパラは1年延期となり、何となく間が抜けた感じだが、法が目指す方向は間違いがない。着実に推進するべきだ。

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