新型コロナウイルスの感染拡大になかなか歯止めがかからない。最近ではシェアハウスや寮など共同で生活する場で感染する例が目立っている。
国民の安全・安心に対する関心は高まる一方で、感染防止対策をアピールすることが集客する上で欠かせなくなっている。国や自治体のお墨付きがあれば説得力は増す。しかし、それがあやふやだったらどうだろうか。
東京都が発行する「感染防止徹底宣言ステッカー」。ステッカーがある店は対策をとっているから安全ということをアピールするもので、都はこのステッカーが掲示された店の利用を呼び掛けていた。が、その店で集団感染が発生するという事態が起こった。
ステッカーの取得はそう難しくはない。都のホームページにある感染拡大防止チェックシートに記入し、ステッカーをダウンロードして印刷、店頭に掲示するという仕組み。自己申告であり、都のチェックは入っていない。
感染防止対策を行っていない店でも取得できるため、「本当に意味があるのか」という声は当初からあった。このため、都はステッカーを掲示している繁華街の飲食店を中心に、対策がとられているかどうか確認を進めることにしたという。人手に限界があり、きめ細かなチェックは望めそうもないが、やらないよりはいい。
都に限らず、同じようなステッカーやポスターなどを作成、発行し、利用者にアピールする自治体は少なくないが、取り組み内容を事前チェックしているところはそう多くはない。「自主的な取り組みを促すもの」といったスタンスのようだ。
そうした中、しっかりとしたルール作りに取り組むところも出ている。
千葉県旅館ホテル生活衛生同業組合は、感染防止に取り組む宿泊施設を組合が認定する「ちばやどスクラム」制度を始めた。
全旅連などのガイドラインを参考に独自のチェックマニュアル(全40項目)を作成、内容を要約した10カ条を守る宿をスクラムのメンバーに認定。その数、160軒ほどで、各宿は10カ条を記載した認定証をフロントなどに掲示し、順守・励行を宿泊客へ宣誓している。
また、熊本県玉名市は感染予防の基準を満たした宿泊施設を認定する「玉名クオリティ認証制度」を創設、8月1日からスタートした。独自のチェックリストを作成、現地確認を実施し、基準を全て満たす施設を認証するという。
ウィズコロナの時代。観光客を呼び込むには衛生対策がますます重要となってくるだろう。おざなりの認証・認定制では足元をすくわれかねないことを実施する側は認識すべきだ。
都の「感染防止徹底宣言ステッカー」。実効に疑問の声もある(東京都内で)