春本番。これから桜前線が日本列島を北上し、それが終われば新緑の季節を迎える。旅行のベストシーズンを前に、新型コロナウイルス対策の「まん延防止等重点措置」も全面解除され、観光業界にとって追い風となることを期待したい。
温泉地、観光名所、テーマパークなど旅行先は数多いが、新緑が映えるこの時期、国立公園を選択肢の一つに加えてはいかがだろうか。
公益財団法人日本交通公社は13日、「国立公園に関する旅行意識」を発表。国立公園の旅行参加意向を尋ねたところ、「ぜひしてみたい」「してみたい」で約6割あった。16年調査時とあまり変わらない数字だが、「ぜひしてみたい」は11.6%から18.5%と約7ポイント増え、訪問意欲が高まっていることが分かった。
調査では国立公園エリアを含む11の観光地を挙げ、行ってみたいかを聞いた。その結果、いずれの観光地も訪問意向は5割を超え、特に箱根、奄美大島、やんばる、軽井沢、上高地が高かった。
日本の国立公園は約90年の歴史があり、その数全国に34。面積は国土の約6%を占めている。国も国立公園を世界水準の「ナショナルパーク」としてブランド化しようと「国立公園満喫化プロジェクト」などを推進している。
国立公園を定める自然公園法は風景地の保護と利用の増進を目的に掲げている。過度な利用は貴重な自然を壊し、ひいては観光資源としての価値も失わせる。保護と活用の両立をしっかりと図っていくことが必要だ。
先ごろ、国立公園の魅力を発信する人材を養成する一般社団法人ネイチャーホスピタリティ協会(東京都中央区、涌井史郎会長)が発足した。ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構の兄弟法人で、同機構の小川正人理事長は「ナショナルパークの活性化に挑戦する」と意気込む。
同協会は「ナショナルパーク検定」事業を手掛け、第1回は3月1日から計10回の講座を開講し、講座終了後に検定試験(4月5~11日)を実施する。合格すると「ナショナルパーククラブ会員」に登録され、さらに複数回の合格で国立公園の指南役「ナショナルパークアウトフィッター」として、協会主催の活動などに参加できるという。その活躍に期待したい。
「日本の国立公園は人との共生で成り立っており、里山の整備など人が関わることが美しさの維持に欠かせぬ要素になっている」と小川氏は指摘する。
国立公園は外国人、特に欧米系の人が関心を示す。コロナ禍でインバウンドは逆風が吹いているが、終息すれば日本の観光をアピールする武器ともなる。ナショナルパークへの歩みを止めてはならない。
国立公園は日本の貴重な観光資源だ(中部山岳国立公園)