
コロナ禍前は外国人が身近にいるのが当たり前だった。この光景は戻って来るのだろうか
訪日外国人観光客(インバウンド)の姿が消えて2年ほどたつが、政府が10日から受け入れを再開したことで、観光業界は明るさを取り戻しつつある。「インバウンド復活への道のりは容易ではない。まだまだ時間がかかる」との指摘もあるが、事態が好転しつつあることをまずは喜びたい。それほど観光業のダメージは大きかった。
当面は1日2万人の枠内で受け入れ、旅行者の動きを把握しやすい添乗員付きのパッケージツアー限定とした。新型コロナのリスク評価、ワクチンの有効性から分類した欧米や中国、韓国、台湾など98の国と地域が対象となる。入国時検査や自宅などでの待機は免除する。
観光庁がまとめたガイドラインによると、旅行業者はツアー参加者に対し、マスク着用をはじめ、3密回避などの感染防止対策の順守、民間医療保険への加入などを求めることが明記された。
参加者にコロナの症状が疑われる場合にはツアーから離脱させ、滞在先の病院などに受診させて医療機関や保健所などの指示に従うよう求めた。
感染拡大を防ぐには初期対応が何より重要。自治体や医療機関、宿泊施設などが迅速に対応できるよう具体的なマニュアルもまた必要だ。
再開はされたものの、不安も残る。その一つが旅行業者の体力だ。コロナ禍で業績が悪化し、人員削減に手を付けざるを得ない業者も少なくなかったと聞く。受け入れ態勢が十分でない中でインバウンドを扱えば、従業員が疲弊し、トラブル時の対応も後手に回るのではないかと心配になる。
ツアーの参加者の募集やビザの発給手続きに時間もかかり、実際にツアー客が訪れるのはもう少し時間がかかりそうだ。
コロナ禍前は、インバウンド市場はFIT(個人旅行)の動向(取り込み)が鍵を握っているといわれた。
インバウンドを積極的に受け入れている「ジャパニーズ・イン・グループ」の福田金也会長(タートル・イン・日光)はインバウンド受け入れの第一歩と評価しながらも、「外国人客の海外旅行は個人旅行が主であり、個人旅行受け入れに向けた道筋を早く示してもらいたい」と要望する。
添乗員付きパッケージ旅行からどうFITに移行するのか、政府の決断に期待する声も多い。
円安を背景にインバウンド需要は今後高まることが予想されるが、本格回復にはコロナの収束はもちろん、エアラインの国際線の回復や、日本にとって最大のお得意様であるアジア地域の海外旅行機運の盛り上がりが欠かせない。
旅館・ホテルはインバウンド需要回復をにらみ、受け入れ態勢を少しずつ整備していくことも考えたい。
コロナ禍前は外国人が身近にいるのが当たり前だった。この光景は戻って来るのだろうか