【観国之光 422】富士登山鉄道 大所高所から議論を 本社論説委員 内井高弘


富士登山鉄道は果たして開通するのか、紆余曲折がありそうだ

 日本の宝ともいえる富士山(3776メートル)。「フジヤマ」として外国人の認知度も高く、富士登山は国内外の観光客に人気だ。山梨県側から富士山5合目(2300メートル付近)を訪れる観光客は、コロナ禍前の19年には約506万人に達している。
 6月22日には世界文化遺産登録10年という節目を迎えたが、観光客数の抑制と環境負荷の低減が課題となっている。その一環なのか、富士山に鉄道を走らせる「登山鉄道構想」が浮上し、にわかに注目を集めている。

 鉄道敷設は山梨県の長崎幸太郎知事が意欲を示している。麓の「富士吉田口」から5合目までを結ぶ富士スバルライン(有料道路)の道路上に次世代型路面電車(LRT=ライト・レール・トランジット、騒音や揺れを抑えた低床の路面電車)を整備しようというものだ。

 構想によると、LRT1編成の乗客は120人で、上りは50分ほど、下りは速度制限がかかるため70分ほどかかる。事業費は1400億円と見積もり、運賃は採算をとるため、往復1万円(利用者数年間300万人、見込み)と試算している。

 鉄道ができることによってバスやタクシー、マイカーの通行はできなくなり、富士吉田口から5合目までは徒歩と鉄道のみとなる。

 登山鉄道が実現すると、排気ガス削減のほか、比較的雪に強いことから通年での観光が期待でき、観光客の分散効果につながるとの見方がある。一方で、災害時や土砂崩れがあった時には不通になることや、電気バスの走行で排気ガス対策は十分といった指摘もある。

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