【観国之光 432】オーバーツーリズム 対策には丁寧な説明を 本社論説委員 内井高弘


成田空港到着ロビーも多くの人でにぎわっている

 インバウンド需要が回復している。8月10日には、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて制限されてきた中国人の日本への団体旅行も解禁された。

 もっとも、中国の景気減速や、東京電力福島第1原発の処理水を巡り旅行を控える動きも出ているだけに、コロナ禍前のような、「爆買い」などといった動きは起きにくいのではとの見方も少なくない。

 中国人旅行者は2019年にはおよそ953万人と、訪日外国人の3割を占めていただけに期待は大きい。半面、混雑に拍車をかけるのではないかという懸念の声も。いわゆるオーバーツーリズム(観光公害)だ。

 人気観光地・京都市内ではバス、鉄道の混雑をはじめ、ごみ捨てや騒音などへの苦情も増えつつある。市民からは「普通の生活がさらにしにくくなってしまう」との声も聞かれる。

 コストもかかる。「歩道に人があふれ、車道を歩く人もいる。誘導員を雇う費用や看板の設置費用もばかにならない。ポイ捨てにはごみ捨て用の袋を配るが、この費用の捻出も頭を悩ます」と観光地の関係者。

 観光庁は9月6日、「オーバーツーリズムの未然防止・抑制に関する関係省庁対策会議」の初会合を開いた。関係省庁の局長級がメンバーに入っている。

 オーバーツーリズムについて岸田文雄首相は、「政府として重要課題だと受け取め、この秋にも対策を取りまとめたい」と話している。どういった方向性が示されるのか注目したい。

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