首都圏を中心に日本で風疹(ふうしん)が大流行しているが、もはや日本国内だけの問題ではなくなった。アメリカの疾病対策センター(CDC)は現地時間の10月22日、予防接種や過去の感染歴がない妊婦に対し、日本への渡航自粛を勧告したのだ。
CDCが呼び掛ける注意として最大がレベル3までの中、今回の日本の風疹大流行に対してはレベル2のアラートとなった。これまで同じレベル2のアラートが出されたのは、コンゴのエボラ出血熱や中南米で発生したジカウイルス感染症などであることから、日本人が思う以上に深刻な状況と判断されていることが分かる。
国立感染症研究所によれば、10月31日現在、今年の風疹患者数は全国で1692人で、うち東京都が最多の589人となっている。今まで首都圏を中心に報告が多かったが、出張や旅行などで地方にも広がりを見せており、今では感染報告がない県は、青森県、高知県、佐賀県、大分県の4県にとどまる。
一方で10月31日、世界保健機関(WHO)はオーストラリアで風疹が根絶されたと発表した。2015年、日本とオーストラリアが属するWHOの西太平洋地域委員会では、20年を風疹排除目標年とすることが推奨され、厚生労働省も20年までに風疹を排除する目標を掲げている。これには東京オリンピック(東京五輪)・パラリンピックも関連しており、人の出入りが激しくなる東京五輪開催期間までに風疹を排除できないと、大きなリスクが伴うためだ。
WHOによれば、風疹ワクチン接種率は、アメリカ地域で92%、ヨーロッパ地域で94%、日本や東アジア、オーストラリアなどを擁する西太平洋地域で91%であり、インバウンドの主要市場の訪日外国人のほとんどがワクチン接種済みであることから、実質的なリスクはそこまで高くないとも考えられる。
しかし、CDCの注意喚起から「訪日旅行は危険かもしれない」というイメージが付いてまわってしまうことは観光業界にとって大きなリスクだ。厚生労働省も目標にしている通り、東京五輪までの風疹排除は必須の「インバウンド対策」とも言えるだろう。