観光業界において国内旅行のゴールデンウイークに並ぶ、もしくはそれ以上に重要なキーワードとなった「春節」。中国で旧正月を祝う1週間ほどの長期休暇であるが、2014年ごろに「爆買い」現象が発生して以来、中国人旅行者が非常に増加する期間として有名になった。
春節は旧暦の祝日のため、新暦との兼ね合いから毎年日付が異なる。今年は2月5日が春節当日で、連休は前日4日の「除夕(大晦日)」スタートの7連休となる。そのため、本紙発行の9日は、春節後半戦に対応している現場担当者も多いことだろう。
中国の最大手OTA「Ctrip」の調査によれば、18年の春節休暇中、約650万人の中国人が海外旅行に出掛け、1人当たり約12万5千円を支出し、従って春節による海外旅行市場は約8千億円程度に上る。近年の中国での海外旅行人気のトレンドからも、19年はより多くの中国人がより消費することが見込まれる。
中国での報道によると、19年春節の人気旅行先ランキングは日本が1位となった。昨年の国慶節に続く1位の快挙だ。続いて、タイ、香港がランクインしている。上位勢の顔ぶれにはあまり変化がないものの、新しいトレンドとして、南極や南アメリカなどの注目度が高まっている。これは、中国の海外旅行ブームの裏返しで、人気の海外旅行先に行っても「中国人だらけ」だと海外旅行の醍醐味(だいごみ)がないから、との見方ができる。
この「同胞に会いたくない」というトレンドが強くなると、現状の「中国人だらけ」の日本の人気観光地は、魅力が半減しかねない。ここ数年の中国人の訪日旅行トレンドは「食」「文化・歴史」「地方」にシフトしつつある。このトレンドをうまく生かし、地方のプロモーションを手厚くすることで、中国人観光客を地方に分散させ、「同胞に会いたくない」という中国人のニーズと、インバウンド消費を獲得したい地方のニーズをかなえていくことが重要になるだろう。