【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 403】高利益体質に改善する業態戦略 その2 青木康弘


 前回に引き続き、中規模旅館・ホテルがさまざまな業態戦略をとった時の損益シミュレーション結果を示しながら、どの戦略が高収益体質につながるのか説明しよう。平均的な努力では投資回収できない中規模旅館・ホテルをどうすれば高収益体質にできるか。その鍵は業態戦略にある。

 3、夕食アウトソーシング戦略

 人員・原価の負担が大きい夕食提供を外注化するという戦略である。委託先との契約条件として、夕食単価7千円の20%を販売手数料として受け取るものと仮定する。朝食は自社で提供する。

 総投資20億円(土地代含む)、客室数50室、1泊2食料金1万5千円、1室当たり宿泊者数3人、客室稼働率60%と一般的な旅館・ホテルでこの戦略をとった場合の償却前利益は9千万円弱、借り入れ返済後の収支は▲3千万円と悪化することが分かる。利益改善を狙って、安易に夕食を外注するというのは逆効果になると想定できる。

 4、朝夕食アウトソーシング戦略

 夕食に加えて朝食も外注するという戦略である。自社は客室、売店、ラウンジなどに専念すると仮定する。この戦略をとった場合の償却前利益は9千万円弱、借り入れ返済後の収支は▲3千万円と夕食のみをアウトソーシングした場合とほぼ同じ収支になると想定される。

 単に料飲部門をアウトソーシングするだけでは赤字体質から脱却できないことが分かる。もちろん、料飲部門の外注化をきっかけにして、客室単価・稼働率アップに注力できれば黒字化は不可能ではない。

 5、客室減・高級化戦略

 現状50室ある客室を25室まで減室し、高級客室にリニューアルするという戦略である。リニューアルに伴う追加投資は、1室当たり1800万円、追加投資の総額は4億5千万円と仮定する。高級化とリニューアル効果によって、1泊2食料金3万円、1室当たり宿泊者数2人、客室稼働率75%に変化すると想定する。

 この戦略をとった場合の償却前利益は1億6千万円、借り入れ返済後の収支は2千万円程度のプラスとなる。減室は勇気のいるものであるが、追加投資額を抑制しながら想定通りの単価アップが実現すれば得られる果実は大きいだろう。

 前回に引き続き、今回もエクセルで作成した業態別損益シミュレーションを読者サービスとして無料でご提供する。ご興味ある方は、aokiy@y-bc.co.jpまで「業態別損益シミュレーション希望」とタイトルをつけてメールを送ってほしい。

 (山田ビジネスコンサルティング事業企画部部長)

 
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