旅館・ホテル業界は人手不足が深刻化しており、女性やシニア、外国人の活用が急務となっているが、働きやすい業界かというとそうではない。どちらかというと改善途上にあるのが実態だ。
長時間労働を是とする旧態依然とした考え方や、独特の労働慣習にとらわれていることが、スタッフの採用や定着化を妨げている。今回のコラムでは、特に女性に焦点を当てて、働きやすい旅館・ホテルにするための具体的な対策について紹介しよう。
1、シフト体制を見直す
女性スタッフが働きやすいように、子育て時期でも勤務できるシフトを設定しよう。
日中のシフトが理想的であるが、業務量が少なく固定的に設定するのが難しい場合は、早出(6~13時)や遅出(16~22時)の短縮勤務を組み合わせると良いだろう。毎日早出、遅出というのは負担がかかるが、週に1、2回程度であれば家族の協力次第で対応可能である。
土日祝祭日にシフトを入れるかどうかは、保育園や学童の休日の受け入れ態勢を調べてから判断した方が良いだろう。土曜日は受け入れるが、日曜日は受け入れ不可という地域もあり、やむなく転職してしまうケースがあるからだ。
旅館の後継者(若旦那、若女将など)の場合は、祖父母に幼い子どもを預けるなどして、朝から晩まで身を粉にして働くというケースが珍しくないが、同じ働き方を家庭のある女性スタッフに求めてはいけない。自分たちの価値観を押し付けるのではなく、経営的な視点に立って労働環境の改善を図ることをお勧めする。
シフト体制の工夫は男性スタッフにも必要となっている。団塊ジュニア世代が、両親の介護のために退職や休職を余儀なくされるケースが増えているからだ。これまでの顧客優先の考え方にとらわれず、根本的に見直してみよう。
2、業務分担を見直す
これまでの各部署の役割を見直して、短縮勤務でも対応できる業務を作ろう。例えば、宿泊プランの企画や料金の調整、営業ツールの作成、ホームページの更新、経理労務実務、各種マニュアルの作成などが該当するだろう。内容によっては在宅勤務でも対応可能だ。企画力と専門知識のあるスタッフほどやりがいを持って取り組んでくれるに違いない。
このような仕組みを導入し、スタッフを重用することは、求人活動をする際に人材活躍の多様性という面で良いアピールになり、また若いスタッフが将来不安を持つことなく入社してくれるきっかけの一つとなるだろう。
(アルファコンサルティング代表取締役)