前回に引き続き、不正・不祥事を仕組みでどのように抑止するか説明しよう。金銭横領は数百万円単位の損失となることも珍しくなく、会社の資金繰りに影響を及ぼす。経営者が評価し信頼を寄せている幹部スタッフが引き起こすケースが多く、すっかり人間不信になってしまう経営者もいる。このような事態に陥らないように日頃から仕組みで抑止しよう。
3、指標管理を徹底する
経営者が経営数字に無頓着であると、悪意あるスタッフに見抜かれやすい。日頃から重要経営指標(KPI=Key Performance Indicator)を開示して、目を光らせていることを周知しよう。不正の抑制に効果的な指標は、食材原価率、食材別仕入れ額(月額)、飲料原価率、売店原価率、売店棚卸回転率、売上取消件数、出張旅費(月額)、接待交際費(月額)、個人別の立替金精算額である。
調理部門が食材仕入れで不正を働いている場合は、食材別の仕入れ額が売り上げと連動しなくなる。例えば、食肉卸と結託している場合には、宿泊客数に関係なく、肉の仕入れ額が高止まりする傾向にある。業者別の支払い額を毎月整理して幹部スタッフと共有するだけでもけん制につながる。
4、スタッフの金銭感覚をチェックする
プライバシー侵害にならない範囲で、スタッフの所有する自宅や車が奢侈(しゃし)でないか、お金の使い方が収入に見合ったものか、目配りを行おう。高価なものを身に付けていたり、外食に過大なお金を使っていると社内で噂になるものだ。
もし思い当たるスタッフがいたら、直属の上司や同僚に退社後や休日の過ごし方などを聞き出したり、担当業務で不審な行動がないかチェックしよう。
このような問題は、同じ業務を長年担当させていると起きやすい。仕組みで解決するためには、定期的に配置換えを行うか、連続休暇制度を導入すると良いだろう。
配置換えを行えば、不正の被害を最小限にとどめることができる。連続休暇を導入すれば、担当スタッフの不在時に不正を発見しやすくなる。
(アルファコンサルティング代表取締役)