旅館・ホテルは専門的な運営能力、質の高いサービス提供能力が要求される一方で、離職率の高さによりスタッフ教育に苦労することが多い。スタッフの能力レベルの底上げを図るためには、業務マニュアルの作成・運用が不可欠であるが、作り方が分からない、昔導入したもののいつの間にかうやむやになってしまったという声をよく聞く。
今回コラムでは、業務マニュアルを上手に作成するための手順を紹介しよう。作成するにあたって重要となるポイントだけでなく、運用・定着化のコツも紹介したい。
1、業務マニュアルの構成を考える
はじめに、業務マニュアルの目的を決めよう。一概にマニュアルといっても、目的によって資料の構成は大きく異なる。新人スタッフ(派遣スタッフ含む)の育成を目的にするのであれば、会社の考え方や職場のルール、接客の基本、衛生管理、用語集を重点的にまとめると良い。今回コラムでは新人スタッフ向けを想定して説明することとする。
新人向けであれば、入社時から習得すべきものを時系列にして構成すると良いだろう。すなわち、(1)経営理念・行動指針(2)基本姿勢(3)勤務中の心構え(4)勤怠ルール(5)服装と身だしなみ(6)立ち方、座り方、歩き方、お辞儀の仕方(7)電話応対と言葉遣い(8)食品衛生管理(9)クレーム対応(10)専門用語集(11)マニュアルの使用方法―の順である。
2、経営理念・行動指針
業務マニュアルを作成する上で、経営理念・行動指針は欠かせないものである。経営理念により自社が最も大切にすることが明確化され、行動指針により接遇レベルが規定される。スタッフのサービスレベルにばらつきが大きい、どこまで踏み込んだ顧客対応をすべきか経営陣の間で意見の相違があるならば、まず経営理念・行動指針を定めよう。
3、基本姿勢
接客サービスやハード設備、料理の提供水準、衛生管理、商品づくり、販売活動、防災対策、地域貢献、個人情報保護、環境保護などに対する取り組み姿勢をまとめる。
例えば、「私たちはお客さまの立場に立ち、おいしい料理をご提供できるよう、日々研究し追求するとともに、温かいサービス、雰囲気の良い空間づくりに努め、心より楽しめる憩いの場を提供します」などの文を箇条書きでまとめると良い。朝礼時に読み合わせなどを行うと、自発的なスタッフ育成につながるだろう。
(アルファコンサルティング代表取締役)