前回に引き続き、労働時間を減らしながら売り上げを維持・向上するためのポイントを紹介しよう。仕事のやり方を変えずに新法に対応しようとすると、より多くのスタッフが必要となり、人件費の増大につながる。一方で、時間外労働や有給休暇に関する規制に違反すると、厳しい罰則規定があるので注意したい。
労働生産性を向上させるためには、現場主導の改善だけでなく、経営者の積極的な関与と決断が必要な場面が出てくる。次の点に留意しよう。
1、業務の廃止・簡素化は経営者の決断が必要となる
全ての業務は何らかの歴史的な背景と目的があって開始されているものである。無駄だと思っていながら止められない業務の多くは、顧客や組織の思想・哲学に関わるものである。なじみのお客さまが離反しないか心配したり、先代から続けていることを自分の代でほごにすべきでないという心情が働いたりすることが、改革の妨げになる。過去の非効率な習慣を断ち切るためには、経営者の決断が必要だ。
2、生産性向上がスタッフにとってプラスになることを理解してもらう
人は今のやり方を変えることには抵抗感があるので、まずは現場のスタッフにとって歓迎される改善から着手すると進めやすくなる。例えば、物品の搬送や宴会場のレイアウト変更、深夜早朝の業務などの重労働を減らすことはスタッフに歓迎されるだろう。部門によっては、自分の仕事をなくすことにもつながるため、別の活躍の場を用意するなどの配慮も欠かせない。
3、組織図や持ち場を見直す
自分の役割や使命に誠実なスタッフほど、組織の縦割り意識を持ち、セクショナリズムの原因になりがちだ。そのため、業務効率化を進めるためには組織図の見直しが必要となる。旅館・ホテルでマルチタスク化を推進していくためには、組織のくくりを大きくしていくことが望ましい。また、部門ごとに働く場所が離れていると心理的な壁ができやすいので、持ち場を近づけてお互いに相談しやすい環境を作ることをお勧めする。
(アルファコンサルティング代表取締役)