【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 473】労働生産性向上のポイント7 アルファコンサルティング代表取締役 青木康弘


 前回に引き続き、労働時間を減らしながら売り上げを維持・向上するためのポイントを紹介しよう。仕事のやり方を変えずに新法に対応しようとすると、より多くのスタッフが必要となり、人件費の増大につながる。一方で、時間外労働や有給休暇に関する規制に違反すると、厳しい罰則規定があるので注意したい。

 働き方改革に対する関心の高まりによって、サービス残業に対する世間の目が厳しくなってきている。過払い金請求に次ぐビジネスチャンスとして弁護士事務所が目を付けてきており、実際に未払い残業代請求を受けた旅館・ホテルは少なくない。トラブルにならないよう次の点に気を付けよう。

 1、固定残業代制が適切に機能しているかチェックする

 労働時間が長くなりがちな旅館・ホテルでは、基本給や諸手当の中に残業代を含むという取り決めをしているケースがある。運用の仕方を間違うと、サービス残業と受け取られるリスクがあるので注意が必要だ。

 固定残業代として認められるためには、固定残業代を除いた基本給の額、固定残業代に含まれる労働時間数と計算方法、超過分支払いの合意などが定められている必要がある。また、就業規則、雇用契約書、給与明細などに固定残業代が残業代の支払いに充当されていることが明示されている必要がある。皆さまの旅館・ホテルで適切に運用されているか確認することをお勧めする。

 2、勤怠の実態把握を行う

 調理部門は出勤から退勤までの時間が長く、途中の中抜け時間も厳密に把握しにくいことから、労使間のトラブルになった時の未払い残業代の請求額が大きくなりがちだ。スタッフの手元にタイムカードがなくても、手帳に勤務時間や業務内容について詳細に記録していれば認められることがある。サービス残業は旅館・ホテルの必要悪であり仕方がないと放置せずに、正確な労働時間の把握に努めよう。

 クラウド式または電子式のタイムカードに変更した上で、毎日の労働時間をチェックし、出退勤・中抜けの時間は妥当か、過重労働になっていないか、非効率な業務をしていないかなど抜き打ちでチェックすることをお勧めする。

(アルファコンサルティング代表取締役)

 
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