前回に引き続き、労働時間を減らしながら売り上げを維持・向上するためのポイントを紹介しよう。仕事のやり方を変えずに新法に対応しようとすると、より多くのスタッフが必要となり、人件費の増大につながる。一方で、時間外労働や有給休暇に関する規制に違反すると、厳しい罰則規定があるので注意したい。
スタッフが労働時間の削減に消極的である場合には、旧態依然とした雇用慣行、賃金制度が原因となっている可能性がある。次のような問題があれば、生産性向上に取り組む前に諸規程の見直しを検討しよう。
1、時給制または日給月給制をとっている
勤務時間に応じて給与が払われる時給制、日給月給制をとっている場合は、生産性向上が収入減につながるのではないかとスタッフが心配し協力が得にくいことがある。特に長時間労働が恒常化している場合は、残業代が生活給化している可能性が高く、自主的な削減を求めるのは難しい。
このようなケースでは、生活に必要な額を目安として月給制に移行することを検討しよう。時間外手当の支払いによる人件費上昇が懸念されるのであれば、固定残業代を含む賃金体系にすると良いだろう。
2、奉仕料・指名料の慣習が残っている
奉仕料や指名料を客室係が直接受領する制度はモチベーション向上策として有効であるが、生産性向上には逆効果となることがある。会社の都合より自身の都合を優先した方が、収入が増える可能性が高いからだ。実際に、お客さまの入り込みに関係なく出勤日数を増やしたり、担当するお客さまを選べたりすると分配額が増える可能性が高い。
このようなケースでは、お客さまからの金銭的評価だけでなく、生産性向上への取り組み姿勢を給与査定の際に重視すると良いだろう。会社の指示やシフトに従い、他のスタッフと協力して効率的に業務を進めるスタッフを積極的に評価すれば、非協力的なスタッフの姿勢も変わってくるだろう。
皆さまの旅館・ホテルがマルチジョブを推進するならば、部署やスタッフ間の雇用形態・待遇の格差是正は不可欠なものである。生産性向上の取り組みをきっかけとして、旧態依然とした雇用慣行を見直すことをお勧めしたい。
(アルファコンサルティング代表取締役)