前回に引き続き、労働時間を減らしながら売り上げを維持・向上するためのポイントを紹介しよう。仕事のやり方を変えずに新法に対応しようとすると、より多くのスタッフが必要となり、人件費の増大につながる。一方で、時間外労働や有給休暇に関する規制に違反すると、厳しい罰則規定があるので注意したい。
労働生産性を測る指標として最も重要なものが人時生産性である。売り上げを総労働時間で割ることで算出できる。生産性向上というと総労働時間の削減に目が向きがちだが、売り上げアップでも向上させることが可能だ。次のような施策を行って安定的な売り上げ拡大を目指そう。
(1)2~3カ月前のオンハンド(手持ち予約)目標を重視する
宿泊日より1カ月を切ってしまうと値下げや高額のリスティング広告など、生産性低下につながる施策しかとれなくなってしまう。予約見通しが芳しくない時は、数カ月前から料金調整やプロモーションを行うことが望ましい。
(2)価格変更は1カ月前より少し前に実施する
需要動向に合わせた料金変更は1カ月前に実施する旅館・ホテルが多い。同じタイミングで値下げを行ってもマーケットの相場が下がってしまっているので予約増につながりにくい。もし値下げを実施するならば1カ月前より少し前に行うことが望ましい。
(3)基準となる旅館・ホテルを決めて価格調整を行う
地域に同業他館が多い場合には、類似する館をいくつか抽出し日別の平均料金を算出したものを参考に価格調整すると良いだろう。もともとの料金にこだわりすぎると他館の料金変動についていけず、収益機会を逃すことになるので注意したい。
(4)地域の客室在庫情報を集計する
地域の同業他館の客室在庫量を日別に集計すると、例年に比べて動きの良い日、悪い日を簡単に把握することができる。正確な在庫量を把握することは難しいが、特定のOTA在庫を集計するだけでもトレンドを把握するのには十分である。在庫量が少ない日は低価格プランを終売し、反対に在庫量が多い日は日にち限定プラン等を投入するなどの対策が望ましい。
(5)エリアのイベント情報を取得する
需要動向に影響を与えるイベントの入込予測は、イベント情報を取りまとめているウェブデータベースを利用すると良いだろう。チケットぴあやイベントバンク、観るなび、ウォーカープラスなどのウェブサイトが有効である。
(アルファコンサルティング代表取締役)